システムトレードにマネーマネジメントを取り入れることは非常に重要です。マネーマネジメントとは、簡単に言えば、ポジションサイジング(資金管理=トレード枚数の決定)のことをいいます。
例えば、10億円の資金を持っていたとして、どんなにシステムの予測が正しかったとしても1枚しかトレードしていなかったとしたら、1年経った時点で投資の成果は大きなものになってはいないでしょう。
逆に、証拠金の許す限りの枚数を建てていたとしたら、あっという間に資金を全て失う可能性も高くなります。
自身の資金規模にあった最適なトレード枚数があるはずです。マネーマネジメントをおろそかにして投資で勝つことは不可能といえるでしょう。
バン・K・タープの「魔術師たちの心理学」(パンローリング)の中で、ラルフ・ビンスが行った実験について触れている箇所があります。
それは、博士号を持つ40人を対象に、勝率が60%で正の期待値を持つコンピュータゲームを100回してもらい、手持ちの資金1000ドルをどれだけ増やすことができるか(1回当りの賭け金は自由に設定可能)を検証したところ、最終的に元の1000ドルより増やすことができたのは、40人中、たったの2人だけだったということです。
なぜ、95%の人たちが損失を被ったのでしょうか?これは、彼らの心理状態と、稚拙なポジションサイジングに関係していたそうです。彼ら一人一人が負けていくパターンはいろいろあれど、結局はあまりに多くの資金をリスクにさらしたところから来ています。
下表は、発生した損失を回復し、収支をトントンに戻すために、どれだけの利益を出さなければならないかを示したものです。
ドローダウン | 資金を回復するための利益率 |
5%の損失 | 5.3%の利益 |
10%の損失 | 11.1%の利益 |
20%の損失 | 25%の利益 |
30%の損失 | 42.9%の利益 |
40%の損失 | 66.7%の利益 |
50%の損失 | 100%の利益 |
60%の損失 | 150%の利益 |
70%の損失 | 233%の利益 |
80%の損失 | 400%の利益 |
上表のように、資金の減少が大きいほど、損益をトントンに戻すことが困難になることが明確に分かると思います。
システムトレーダーが勝っていくために必要なことは、第一に、トレーディングを有利にしていくためのシステムを構築していくことです。
そして、その一回一回のトレードに対して投資する資金の割合を数値に置き換えて、取るべきリスクの度合いを決定することです。 毎回賭ける割合は、資金額の数%から数十%の範囲のうちに自己の資産額を極大化できるポイントがあるはずです。 ラルフ・ビンスのマネーマジメント手法は、そのことに一つの明確な解答を与えてくれていると思っています。
マネーマネジメントがわかる! 参考書一覧
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