

2021.11.08
<著者プロフィール> 浜口準之助(はまぐち・じゅんのすけ)
約15年にわたり機関投資家のファンドマネージャーとして株式運用に従事。信託銀行などで主に年金資金の日本株運用を行う。その後約14年にわたり投信運用会社にて投資環境のセミナー講師に携わる傍ら個人投資家として株式運用を行い、「億り人」の仲間入りを果たす。「浜口流コア・サテライト戦略」を提唱し自らも実践している。「醍醐味に満ちたライフワークとして、株式投資に勝るものなし」との基本観から、個人投資家に実践的な株式投資手法の研究を続けている。 社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『黄金サイクルと農耕民族型投資戦略』(パンローリング刊)、ブログ 浜口準之助のテツ・ホテル・グルメ・株式運用 をほぼ毎日更新中、こちらでは旅の話もしている。
浜口です。今回もまた、投資銘柄フォロー・定点観測から始めましょう。
まずは前回の当ブログのアップ日(2021年10月25日)以降の「浜口流コア・サテライト戦略」下記2つの図、上は株価が10月22日時点、下はその2週間後、株価が11月5日時点のデータです。
9月27日以降、大きく下落した商船三井・日本郵船の株価(以下、両銘柄の株価と記す)はここ2週間は概ね横ばいだったのですが、11月4日の昼に日本郵船が中間決算を発表して以降、再度急落する展開となりました。郵船の決算については、セルサイド・アナリストは知る限り全員「ポジティブ」と評価しているのですが、株価はアナリスト・レポート評価と真逆の展開となっています。前回の結論、「商船三井・日本郵船とも、難しい銘柄になってしまったな」という感がさらに強くなりました。これが当ブログの結論ですが、後段で詳しく触れます。



当ブログで披露している投資環境見通し、相場観については、方向性として変化ありません。景気敏感バリュー株は足元で乱高下しているが、徐々に上昇に転じる銘柄が多くなろうと考えます。ここに掲載している銘柄群については基本、継続保有で問題なしです。海運株は別途、考えていきます。
もう一つの投資戦略、「商船三井ロング・郵船ショート」について説明します。

上のグラフは10月22日時点、下はその2週間後、株価が11月5日時点のデータです。
11月5日時点で商船三井の株価は6,680円、一方で郵船は7,450円と、株価の単純比較では770円ほど郵船が高い状況です。ここで注目すべきは、前回比較では郵船の急落により、両銘柄のさやは10月22日の1,210円から11月5日の770円と急縮小している点です。
私は現在も引き続き、このポジションは持っていません。前回当ブログで、�〕港イ�商船三井よりも1,210円も上さやというのは近年、ほとんどない状況。�⇔礁段舛箸盧�週から来週にかけ中間決算発表を迎える。これをきっかけにさやが緩やかに縮小方向に転じる動きになったら、このポジションを徐々に仕掛けよう……としましたが、今回のさやの縮小は、11月4日の郵船の急落により、一気に起こってしまいました。株価・さやとも、とても波高い相場。とてもではありませんが、現状では段階的にさや取りを仕掛ける状況にありません。両銘柄のさや取りは当面、様子見とします。次の展開を待ちましょう。
なおグラフは過去3カ月の商船三井と郵船の株価を示したものです。グラフは日経SmartChartPLUSを用いて、概ね、重なるように作っています。 (日経SmartChartPLUS)
さて、ここからは今回のメインテーマ、「株価がアナリスト評価に反応しない日本郵船」について考えてみたいと思います。前回のテーマが「高値から30%の暴落!!商船三井・日本郵船の今後は」ですから、両銘柄、特に郵船の相場観について、より失望方向になっていることがわかります。

商船三井(チャートギャラリー)

日本郵船(チャートギャラリー)
過去一か月の両銘柄の株価推移を。右の日本郵船、11月4日以降の株価推移に注目してください。お昼12時に良好な中間決算発表があるとの期待感から、前引けにかけ郵船の株価は、8,940円の高値を付けました。しかし後場以降、市場は決算内容を好感せず暴落、大引けは7820円-620円。前場の高値比較からは-1,120円という厳しい下げとなりました。
この日の決算発表内容は、市場関係者が大いに注目するところとなりました。11月4日は夜にかけ、決算発表・その後のアナリスト向け会社説明会を受けセルサイド・アナリストのレポート発行らラッシュになりました。私が知る限り、内容は概ね「ポジティブ」「買い推奨」との評価でした。それは以下にお示しする、レポート上の郵船の目標株価からうかがえると思います。
JP Morgan 10,000円、みずほ12,000円、野村 10,500円、三菱UFJMS 9,000円、UBS 10,900円。MS MUFG 10,400円。すべて11月4日株価の遥か上です。以下にお馴染みのMS MUFG証券の海運株アナリスト尾坂さんの11月4日付レポートの一部を貼り付けさせていただきますね。
この通りなんですが……しかし翌11月4日(金)の株価は、7,450円 -370円安となっている。尾坂さん含め、他のアナリストが同じ日に強気のレポートを書いているのに、株価はこれに逆行する動き。なぜなのか。
理由の一つは、ここもと急落しているバルチック海運指数があると思います。
しかし……バルチック海運指数は知名度は高いですが、これはバラ積み運賃の指標である一方、今回の日本の海運株の好調さはコンテナ部門がけん引しているわけですから、この指標を見て株価を判断するのは正しくない。だからこそセルサイド・アナリストは、コンテナ指標を見て投資判断をしているわけです。この点については、私が別ブログで書いている以下のアップが参考になると思います。
先週のグローバルコンテナ貨物指数は、6%の上昇だったみたいだ
ではなぜ、アナリストが言うような株価形成にならないのか。
以下は当ブログの「第14回 高値から30%の暴落!!商船三井・日本郵船の今後は」からの引用です。
以下、一部かなり加筆しながら引用します。
これは Twitter(復活のR@株式投資さん)がこしらえてくれた1949年以降の郵船の月足に一部、私が赤線を加えたものです。
日本郵船はテンバガーを達成後、株価は大きく下落している。こうなると、テンバガー達成後下落=大天井形成との考えも成立するわけです。これはサブシナリオの見方ですが、この場合には、郵船(商船三井もですね)には手出し無用です。
……このサブシナリオが起こってしまった可能性があります。大相場になった後の銘柄の株価は、理屈通りに動かなくなる。それ以降の好材料も「織り込み済み」と判断され、むしろ懸念材料(ここでいうところのバルチック海運指数の急落)がデフォルメされながらも株価材料として取り沙汰される。そんな展開もあり得るわけです。
長くなりました。そろそろ総括を。
両銘柄は大人気化した後、これまでと株価変動のパターンが変わってしまった。両銘柄とも、「取る」のがとてもとても難しい銘柄に変化してしまった。残念だが、このことだけはお伝えしなければならない」……とここ2回に渡りブログで書いてきましたが、この思いは強くなるばかりです。本当です。
「両銘柄の株価は、糸が切れた凧になってしまった」「現実以上に、株価に対する疑心暗鬼が両銘柄株価を動かすようになってしまった」と考えます。こうなるとアナリストが予測しても、その通りにならない可能性がある。そのうちにコンテナ運賃も下落して、終わってみれば。「結局はコンテナ運賃より、株価が先行していたんだね」となりかねないリスクもあります。 そして最後に、これで3度目になります。前号で書いた以下のことを再強調させていただきます。
覚えておいて欲しいこと……当ブログを開始したのは今年の4月12日であり、当時から私は、両銘柄に注目していました。この頃の両銘柄の株価は、ともに4,000円前後でした。当時から両銘柄に投資している方は、私自身も含め、現時点で資産は増加していると思います。一定の果実は得た。その状況を受け止め、喜んでいただければ嬉しく思います。
ここまで、人気化した海運株にフォーカスしブログを書いてきました。次号以降はひとまず海運株から離れたいな。現状、そう思っています。理由は繰り返しですが。「取る」のがとてもとても難しくなった銘柄ばかりコメントし続けるのは不毛と考えるからです。
以上です。今回はこの辺で。みなさんの株式運用の参考になれば幸いです。
なお皆さんの株式運用は、くれぐれも自己責任でお願いします。ここは強調させていただきます。