「恐怖で買って、強欲で売る」短期売買法
ローレンス・A・コナーズ,
長岡半太郎,
山口雅裕
パンローリング
A5判 222頁 2019年7月発売
本体 2,800円 税込 3,080円
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人間の心理に基づいた永遠に機能する戦略
読者のご意見
エッジは恐怖と強欲から生まれる!高勝率短期売買法
バフェットの手法の短期売買版!
ウォーレン・バフェットの投資信条とは、「他人が強欲になっているときに恐れて、他人が恐れているときに強欲になる」というもので、それを基に反復可能な手法を打ち立て、巨額な富を築いてきた。ただ、この言葉はよく聞くが、実行するのは簡単ではない。その証拠に、2人目のバフェットはいまだに出現していない。このバフェットの投資の神髄をさらに深く考察すると、「バフェットほど、人間の行動を理解している人はいない」ということになる。
バフェットは人々がストレスを受けると、不合理になることを十分に理解し、それを投資に生かしてきた。その手法を短期売買で再現可能にしたのが本書である。
- 恐怖はトレードでエッジ(優位性)を生み出す。
- 市場で恐怖が高まるほど、エッジは大きくなる。
- 強欲もエッジを生み出す。
- メディアやインフルエンサーは多くのトレーダーや投資家に影響を及ぼし、恐怖や強欲をより高める。
- 機会損失(儲けの機会を失うこと)への恐怖は人に組み込まれた強烈な感情で、買い手にとっては、これがエッジになる。
- バフェットが実行してきた「恐怖で買い、強欲で売る」手法は、政治的・経済的・技術的な変化が起ころうと、この四半世紀、ずっと機能してきた。
本書では、幅広い検証や実例を通して、恐怖が高まったときに買い、強欲が増したときに売ることが最も高勝率なトレード法だということを検証してきた。この手法のエッジは21世紀になってからの激動を潜り抜けてきたことでも分かるように、今後も長く残り続けるだろう。本書から示唆や刺激を受けて、ぜひ読者なりの人間の行動に基づいた「恐怖で買い、強欲で売る」短期売買手法を確立してほしい。
著者紹介
ローレンス・A・コナーズ(Laurence A. Connors)
資産運用会社のLCAキャピタルとマーケット調査会社であるコナーズ・リサーチのCEO(最高経営責任者)。投資業界で30年以上の経験があり、1995年以降に投資情報の提供会社のコナーズ・グループを含め、売上高数百万ドル規模の投資関連企業2社を築き、コナーズ・グループは2009年にアントレックス非上場企業指数から10大急成長私企業の1社に二度選ばれた。1982年にメリルリンチに入社し、後にDLJの副社長になった。彼の考えや洞察はウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、バロンズ、ブルームバーグのテレビとラジオ、ブルームバーグ誌など、数多くのメディアに引用されている。著書には『魔術師リンダ・ラリーの短期売買入門』(リンダ・ブラッドフォード・ラシュキとの共著)、『コナーズの短期売買実践』『コナーズの短期売買入門』『コナーズの短期売買戦略』『高勝率システムの考え方と作り方と検証』『コナーズRSI入門』(いずれもパンローリング)などがある。
目次
監修者まえがき
免責事項
謝辞
第1章 恐怖と強欲と相場
第2章 RSIパワーゾーン戦略
第3章 クラッシュ戦略
第4章 ボラティリティのトレード
第5章 ボラティリティパニック戦略
第6章 VXXのトレンド戦略
第7章 新高値を利用したトレード
第8章 TPS戦略――恐怖と強欲の高まり
第9章 恐怖から生じるギャップ
第10章 市場で恐怖が高まったときに買い、強欲が増したときに売る
付録1 リスクに比べて大きな利益を得るための優れたトレードの構成(コナーズ・リサーチ・トレーダーズ・ジャーナル 第7巻)
付録2 損切りの逆指値を置くと、今でもパフォーマンスが落ちる(コナーズ・リサーチ・トレーダーズ・ジャーナル 第3巻)
付録3 本書のトレード戦略のためのアミブローカー用アドオンのソースコード
付録4 ローレンス・A・コナーズによるその他の著書
付録5 個人指導のお知らせ
付録6 資産運用会社およびファミリーオフイス向けプライベートコンサルティングのお知らせ
付録7 アミブローカーのプログラミング入門
付録8 相関リスク
付録9 トレードに関する教材
付録10 RSIの計算式とコナーズRSIの計算法
監修者まえがき
本書はローレンス・A・コナーズが著した“Buy the Fear, Sell the Greed : 7 Behavioral Quant Strategies for Traders”の邦訳である。コナーズの著書の翻訳書としては、すでに『魔術師リンダ・ラリーの短期売買入門』『コナーズの短期売買入門』『コナーズの短期売買実践』『コナーズの短期売買戦略』『高勝率システムの考え方と作り方と検証』『コナーズRSI入門』(いずれもパンローリング)があり、本書で7冊目ということになる。
定量的なデータを用いて市場の未来を説明しようとする戦略は20世紀の終わりごろから盛んになった。この方法は、データの取得に努力を要し、同じ方法を取る人間が限られているうちは大変うまく機能してきた。他人が持っていないデータを持ってさえいれば、また効率的な執行ができる立場にいれば、労せずして簡単に収益を上げられる時期が確かにあったのである。だが、現在ではこういったアプローチを取り巻く状況は一変している。データはだれでも安価に手に入るようになり、複雑な戦略の実行は極めて容易になった。定量的なアプローチでもって市場を攻略しようとする人は飛躍的に増えたのである。
これに伴い、それまで大変良好なパフォーマンスを示してきた戦略の優位性が、時間の経過とともに手のひらの上の淡雪のごとく消えていくのを私は数多く見てきた。今日では、定量的分析においてデータを多く集めただけでは、また複雑なモデルにそれを学習させようとするだけでは、その多くは、せいぜい過去の見かけ上のバックテスト結果を良くすることができるにすぎず、将来の再現性はおぼつかなくなってきているのである。もはや、どんなニッチなアノマリーであれ、遠からずそれが人口に膾炙することを前提に話を進めざるを得ない時代に私たちは生きている。
だが、こうした環境下にあっても、いつまでも消えずに残るバイアスもわずかながら存在する。市場参加者の恐怖と強欲に起因するものはその代表的なもののひとつである。本書はこうしたバイアスを利してトレードする具体的な方法を子細に解説している。(全文を読む)
第10章 市場で恐怖が高まったときに買い、強欲が増したときに売る
ここまで、戦略を一つ一つ学んで調べてきたので、これまでに学んだことをまずまとめてから先に進もう。
- 恐怖はトレードでエッジ(優位性)を生み出す。間違いない。
- 市場で恐怖が高まるほど、エッジは大きくなる。
- 強欲もエッジを生み出す。強欲は恐怖ほど強い感情ではないので、エッジはそれほど強くないが、確実にある。特に、弱気相場でFOMO(Fear of Missing Out、機会損失の恐れ)という感情が生じているときにはエッジがある。
- 権威ある人々ほど、多くのトレーダーや投資家に影響を及ぼし、しばしば恐怖を最も高める。メディアは(伝統的なものとSNSの両方とも)これら個人の相場観を広め、時には一時的にパニックを引き起こすほど大げさに伝える。
- 強気相場で恐怖が高まったあと、反騰することが多い。弱気相場で恐怖が高まっても、それはもっともだと受け入れられるため、価格の変動が大きく、通常は強気相場で生じる恐怖ほどの利益は得られない。
- 長期でも短期でも、狼狽売りによる下げが底を打つのは買い手が一気に入ってくるからではない。最後の売り手が売ったときに底を打つのだ。彼らはプロであれ個人であれ、もはや損をする苦痛に耐えられない(業界では、「吐き出す(puke it up)」と言う)。その時点で買ったトレーダーは判断が正しければ、有利な価格で買える。その証券は弱い買い手から強い買い手に移る。それは人間に固有の感情から起きるダーウィン流の淘汰だ。
- 失うことに対する恐怖は人間に組み込まれた非常に強い感情だ。買い手にとっては、それがエッジになる。
- RSI(相対力指数)パワーゾーンで見たように、恐怖は世界のどの市場でも現れる現象だ。世界のほかの市場では、何十年も前からETF(上場投資信託)の短期の値動きをシグナル数の80%以上で正しく予測している。アメリカでは、SPY(S&P500ETF)の短期の値動きをシグナル数の91%以上で正しく予測している。これは偶然ではない。それは売りが出ると、買い手が様子見をするが、イベントが過ぎ去るか恐怖が収まると、再び買いが入るからだ。それは政治的・経済的・技術的な変化が多かったこの四半世紀に繰り返し起きた。これまで変わることがなかったし、今後も変わらないものは人間の感情だ。
- クラッシュ戦略とTPS戦略での空売りで見たFOMO(機会損失の恐れ)という感情は本当に生じる。クラッシュ戦略では、ほとんどの場合、これらの感情から買われる株には現実感がまったく失われる。機会を逃す恐れは非常に強力であり(まさに強欲)、しばしば証券価格を一時的に不合理なほどゆがめる。
- VXXは無価値になるように設計されている。これは構造的に非効率的だ。9年連続で下げると、何か問題があると分かる。あなたは本書で、これが設計された理由や方法、その非効率性、だれがなぜこれをトレードするのかを理解した。恐怖で動く、この構造的に非効率的な証券を利用する戦略は2つある。このトレードに、オプションで最大リスクを事前に決めておく方法を追加して、リスクに対するリターンが大きくなるようにすれば、勝利の方程式が出来上がる。
- 52週高値を付けたあとの深押しで、上昇と下降のサイクルが生じる。52週高値に向かっているときにその株を保有している人は含み益になっている。多くの場合、ポジティブなニュースが出て彼らが安心する一方で、良いニュースで価格は絶対に上げると「論理的に考える」買い手が新たに引き寄せられる。それらの株が上げずに売られると、市場に恐怖が高まる。その恐怖は時に狼狽売りを引き起こし、日中に株価が下げると、理性を失った買い手が売る。その時期にそこで買えば、平均して5取引日以内に上げた。恐怖から生じる、売りに関する影響力の大きな研究を利用すると、52週新高値でトレードをするための体系的で定量化された手法ができる。
- 中長期の上昇トレンドの時期に、恐怖が広がったせいで売られ過ぎになった銘柄を買い下がる戦略は、何十もの株式ETF、特にアメリカのETFで一貫してパフォーマンスが良かった。この買い下がりの手法は、ほかにも成功した投資家たちが安値で株を買い集めるときに使ってきた。TPS戦略では、恐怖が高まるにつれて買い下がる。そして、恐怖が収まって、また買っても大丈夫と考えた買い手がしばしば高値で買い直すときに手仕舞う。弱気相場でも同じことが当てはまる。トレード機会を逃すのを恐れる買い手の強欲と、価格の上昇で損が膨らむのを恐れる売り方の恐怖によって、価格が押し上げられたあと、やがて現実、通常は弱気相場であるという経済的現実があらわになる。そのせいで価格が下げるため、過去20年間に世界の市場は全体として大きく上げたにもかかわらず、この期間のシグナル数の77%以上で空売りによって利益が得られた。
- 証券が何日も売られたあと、恐怖の高まりから翌日にギャップを空けて下げると、証券を保有している人々はまったく落ち着けず、恐れを抱く。その後、再び寄り付きでギャップを空けて下げたあと、さらに下げると、ほとんどの場合、彼らはとにかく手仕舞いたいと思う。彼らはもはや苦痛に耐えられない。歴史的に見ると、ここが彼らの苦痛を取り除いて有利な価格で買う機会だ。
- 本書では、幅広い検証や実例を通して、恐怖が高まったときに買い、強欲が増したときに売ることが最も良い定量化されたトレード法だということを見てきた。私の考えでは、これはトレーダーにとって今でも本当にエッジがある数少ない領域であり、このエッジは今後も長く残り続けると信じている。
市場は変化する。それは常に変わるものだ。だが、人間の感情は変わらない。感情、特に恐怖と強欲が市場で極端に高まったときを特定して、その過程を体系化・定量化して、そこで何度も繰り返してトレードを行おう。
(ウィザードブックシリーズ284)
読者のご意見
タイトルどおり行動経済学本というよりはトレード本であるため、個人的には読みごたえがあった。
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