| 携帯版 |
|
|
|
フィスコ投資ニュース配信日時: 2026/09/18 12:05, 提供元: フィスコ シンバイオ製薬 Research Memo(5):BCVは幅広いDNAウイルスに抗ウイルス活性、治療空白領域に期待(3)*12:05JST シンバイオ製薬 Research Memo(5):BCVは幅広いDNAウイルスに抗ウイルス活性、治療空白領域に期待(3)■シンバイオ製薬<4582>のBCVの開発戦略 (4) 頭頚部がん 頭頚部がんを適応症としたパイプラインについては、前臨床試験での良好なデータを得たことを2025年10月にドイツで開催された欧州臨床腫瘍学会で発表し、上市に向け開発を進めていく方針を決定した。頭頸部とは、頭蓋底(頭の下部)から鎖骨までの間にある顔や首の範囲を指し(鼻、副鼻腔、口腔、咽頭、喉頭、唾液腺、甲状腺などを含む)、これらの部位に発生するがんを総称して「頭頸部がん」と呼ぶ。なかでも、上咽頭がんや中咽頭がんでは、EBV(EBウイルス)やHPV(ヒトパピローウイルス)が発がんに関与していることが知られている。なお、頭頚部がんのうち9割以上は皮膚や粘膜に悪性腫瘍ができる扁平上皮がん(HNSCC)であり、同社は頭頚部扁平上皮がんを適応症として開発を進めていく。患者数は日米欧合計で14.9万人と推計され、抗がん剤の市場規模も大きい。現在の標準療法は、シスプラチンのようなプラチナ製剤とICI(免疫チェックポイント阻害剤)との併用療法が一般的であるが、プラチナ製剤は毒性が強く、高齢者を含む腎機能が低下した患者では投与が困難となっている。 同学会で発表された要旨としては、前臨床試験によって高容量のBCV単剤療法及び低用量BCV+ICIの併用療法の両方で、標準療法(ICI+シスプラチン)と同等の抗腫瘍効果を得られたこと、またBCVとICIを併用することで統計学的有意差を持って、がん細胞を傷害する免疫細胞が腫瘍組織内に浸潤し、がん細胞を傷害するとの知見を得られたとしている。これらの試験結果により、シスプラチンよりも毒性の低いBCVが頭頚部がん治療の新たな選択肢になりうる可能性を示唆した。同社ではこれらの研究成果から、高容量BCV+ICIの併用療法による医師主導第2相臨床試験を実施すべく、準備を進めている段階にある。同臨床試験において安全性や有効性を確認できれば、第3相臨床試験に移行して上市を目指すことになる。 第3臨床試験には多額の開発資金が必要となるため、共同開発パートナーの探索活動を2026年に入って開始している。弊社ではパートナー候補先としてICIを手掛ける大手製薬企業の可能性が高いと見ている。既存の標準療法よりも高い治療効果を得られる可能性のあるBCVとの併用療法を確立できれば、これまでシスプラチンがボトルネックとなって併用療法をできなかった患者にも投与できるようになり、その結果として頭頚部がん向け治療薬市場での一段のシェア拡大が期待できるためだ。頭頚部がんで使用されているICIとしてはペムブロリズマブやニボルマブがある。 (5) EBV関連胃がん EBV関連胃がんを適応症としたパイプラインについては、前臨床試験での良好なデータを得たことを2026年5月に開催された米国臨床腫瘍学会で発表し、上市に向け開発を進めていく方針を決定した。EBV関連胃がんとは、EBVが腫瘍細胞内で持続感染することに伴い発生する胃がんのことで、治療法としては内視鏡手術による腫瘍切除術が一般的に行われているが、手術ができない患者には化学療法が行われている。ただ、EBV由来の遺伝子発現が発がんに関与しているだけでなく、患者の免疫応答にも強く影響を及ぼしているため、未だ有効な抗がん療法は確立されていない。胃がん患者の約1割がEBV関連胃がんと言われており、日米欧合わせて患者数は年間1.3万人程度と推計されている。 学会では、細胞を用いた実験でBCVがEBV陽性の胃がん細胞を効果的に破壊したこと、EBV陽性の胃がん細胞に対して免疫作用の効果を高める因子をBCVが誘導したこと、動物実験においてBCVとICIとの併用により腫瘍増殖を強く抑制することを確認し、それぞれ単独療法による効果を上回ったことなどが試験データを基に発表された。これらの研究成果から、同社はBCVとICIの併用療法がEBV関連胃がんの新たな治療選択肢となりうる可能性があると判断し、医師主導の第2相臨床試験の開始に向けて準備を進めている。同臨床試験において安全性や有効性を確認できれば、第3相臨床試験に移行して上市を目指すことになる。 第3臨床試験には多額の開発資金が必要となるため、共同開発パートナーの探索活動を2026年に入って開始している。ICIとの併用療法となるため、ICIを手掛ける大手製薬企業が候補になると見られる。胃がんで使用されているICIとしてはペムブロリズマブやニボルマブがある。 (6) EBV陽性の多発性硬化症 難病の1つとして知られている多発性硬化症※は、EBVが発症原因に関与していることが近年の研究結果より明らかとなっており、同疾患を適応症とした開発も進める計画だ。治療薬としては注射剤や経口剤など多くの品目が承認されており、全体の売上規模は2025年の293億米ドルから2034年には406億米ドルに達するとの予測がある。ただ、発症原因が不明で再発予防や進行を抑制するための対症療法でしかなく、根治療薬は未だ開発されていない。このため、現在もなお多くの企業が開発を進めている状況にある。 ※ 多発性硬化症は神経疾患の1つで、中枢神経や視神経が何らかの原因で炎症することにより脳や脊髄、視神経などに機能障害を引き起こす疾患となる。再発と寛解を繰り返しながら、症状が進行すると視力や四肢機能、認知機能などが低下する。患者数は北米や欧州などで多く世界で約300万人、日本では約1.8万人となっている。 こうしたなか、同社は2022年にNIH所属のNINDSと、BCVに関する共同研究試料提供契約を締結し、2023年に共同研究開発契約(CRADA)を締結し共同研究を進めてきた。その研究成果について、2025年11月に権威ある学術誌「Journal of Clinical Investigation」に論文として掲載された。 要旨としては、多発性硬化症の主たる発症原因の1つとして、体内のリンパ球細胞に潜伏するEBVの再活性が関与していることが明らかとなったこと、ごく少量のBCV投与でEBVの活性を顕著に抑制することができたこと、また、多発性硬化症患者由来の細胞を用いた実験で、BCVがEBV陽性のB細胞リンパ球細胞のみを選択して阻害することが明らかとなった。これらの研究成果は、EBV陽性の多発性硬化症患者を対象とした治療薬として、BCVが有力な候補になり得ることを示唆している。 BCVの前向きな研究成果を得られたことにより、NHI/NINDSとの共同開発契約を3年間延長することを2026年3月に発表した。今後、臨床応用に向けてより適した投与経路や製剤の開発を進め、臨床試験入りを目指していくことになる。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《HN》 記事一覧 |