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フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/09/30 12:02, 提供元: フィスコ VIS Research Memo(2):mRNA標的創薬のフロントランナーとして事業を展開*12:02JST VIS Research Memo(2):mRNA標的創薬のフロントランナーとして事業を展開■会社概要 1. 会社概要 Veritas In Silico<130A>は、インシリコ技術を基盤に、生命の起源であるRNA(リボ核酸)の真の姿を探究することにより、タンパク質の遺伝子情報を書き写した設計図にあたるmRNA※1上にある部分構造を標的とする、新たな概念に基づくmRNA標的低分子医薬品の創薬システムを確立した。さらに、mRNA標的低分子医薬品の創薬研究を効率的に進めるため、インシリコ技術と実験技術を融合した創薬プラットフォームibVISを構築し、mRNA標的低分子創薬のフロントランナーとして事業を展開している。同社と契約した製薬会社は、ibVISを利用することにより、それまでに製薬会社が自社内に蓄積してきた低分子医薬品の創薬技術や経験、化合物ライブラリーなどのインフラをそのまま生かしつつ、従来のタンパク質標的創薬の手法では治療薬の開発が困難だった疾患を含めて、幅広い疾患に適用可能な応用性を秘めたmRNA標的低分子医薬品の創出に取り組めるようになる。一方、同社は自社パイプラインの構築も進めており、2025年12月期中にmRNAを標的とする核酸医薬品のパイプラインを創出する計画である。これにより、プラットフォーム型ビジネスと自社パイプラインを併せ持つハイブリッド型のビジネスを本格的に展開していく。最終的には「どんな疾患の患者さまも治療法がないと諦めたり、最適な治療が受けられないと嘆いたりすることのない、そんな希望に満ちたあたたかい社会を実現する」との経営理念に基づき、mRNA標的低分子医薬品、核酸医薬品のほか、mRNA医薬品※2やncRNA標的医薬品※3などの研究開発を手掛けるスペシャリティファーマへの進化を目指している。 ※1 mRNA:メッセンジャーRNA。遺伝情報であるDNA配列を写し取って、タンパク質合成のために情報を伝達するRNA。RNAは、核酸(塩基と糖、リン酸からなるヌクレオチドが多数重合した生体高分子)のうち、糖の部分がリボースからなる物質であり、リボ核酸とも呼ばれる。生体内において、遺伝情報の伝達など多くの生命現象にかかわっている。mRNAは、細胞内でタンパク質が合成される際の設計図であり、各タンパク質に対応してそれぞれ個別のmRNAが存在する。 ※2 mRNA医薬品:疾患の予防や治療に効果が期待されるタンパク質の情報をコードするmRNAを人工的に合成した医薬品。mRNA医薬品を投与すると、細胞内で目的のタンパク質が合成され、そのタンパク質が関与する疾患の治療や予防が可能になる。このうち、抗原タンパク質の情報をコードし、抗原に対する宿主の免疫を誘導するものを、mRNAワクチンと呼ぶ。世界で初めてmRNA医薬品が実用化されたのが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンで、緊急時のため使用が許可された。 ※3 ncRNA標的医薬品:種々のRNAのうち、タンパク質の情報をコードしていないRNAを標的とする医薬品。がんをはじめ様々な疾患への効果が期待されている。 ibVISによる共同創薬研究で順調に成長し、上場を達成 2. 沿革 同社は2016年11月、代表取締役社長である中村慎吾(なかむらしんご)氏によって東京都渋谷区で設立された。同氏は、武田薬品工業<4502>在職中の2004年に、当時としては先進的な着想による「mRNAを標的とする低分子創薬」を目指すプロジェクトを立ち上げた。同氏が2011年に武田薬品工業を退職する際には、在職中の研究成果や機材を武田薬品工業より譲り受けた。その後、RNA構造を研究するための統計力学理論や熱力学理論、これらの理論を解析に応用するための計算ソフトウエアなど最新のテクノロジーを採り入れ、改めてmRNA標的低分子創薬を実現するための基礎技術を構築した。並行して医薬品ビジネスや医薬品製造、ベンチャービジネスに関する投資や経営、マーケティングの実務経験も積んだ。これら一連の経験を通じて、同氏はmRNA標的低分子創薬を広く製薬会社へ提供することが製薬業界に共通する課題への解決策になると確信し、同社の設立に至っている。 同社は設立後当初、2017年に化学メーカーの三菱ガス化学などから出資を受け、核酸医薬品の研究を本格的に始動し、核酸医薬品研究の第一人者である、梨本正之(なしもとまさゆき)教授が所属する新潟薬科大学に研究拠点を設置している。一方、2010年代後半よりRNAを標的とする低分子創薬を目指す企業が米国において相次いで立ち上がったことを踏まえ、同社もmRNAを標的とする低分子医薬品の創薬を事業として扱うこととし、2018年より製薬会社とmRNA標的低分子創薬の共同創薬研究を開始している。低分子医薬品の創薬研究に取り組むための研究拠点は、神奈川県川崎市のかわさき新産業創造センター・KBICに設置し、2019年にはmRNA標的低分子創薬のプラットフォーム事業を本格化した。2020年にはRNAを標的とした低分子創薬のビジネスモデルに関する(国内)特許を取得し、2023年にはフランスのCRO(医薬品開発業務受託機関)であるOncodesign Servicesと事業協力に関する基本合意書を締結するなど、mRNA標的低分子創薬に関連する事業を伸長した。一連の共同創薬研究から得られる収益により期間損益が黒字となるなど、事業が順調に成長した状況を受け、2024年2月に東京証券取引所グロース市場に上場している。2024年12月には化学合成などの化学技術プラットフォームを保有する英国Liverpool ChiroChem Ltd.(現 LCC Technologies)とmRNA標的低分子医薬品のパイプライン開発に関する共同事業の実施について提携した。 2025年8月上旬時点で、ibVISを通じて、東レ<3402>、塩野義製薬、ラクオリア創薬、武田薬品工業のパートナー企業4社とmRNA標的低分子医薬品の創出を目的とする共同創薬研究、三菱ガス化学と核酸医薬品の創出及び製造方法確立を目的とする共同研究を実施しているほか、自社で核酸医薬品のパイプライン創出に向けた研究を進めている。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光) 《HN》 記事一覧 |