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フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/10/02 16:44, 提供元: フィスコ スカラ Research Memo(4):DX事業の収益が大幅に回復*16:44JST スカラ Research Memo(4):DX事業の収益が大幅に回復■スカラ<4845>の業績動向 2. 事業セグメント別動向 (1) DX事業 DX事業の売上収益は前期比1.2%増の4,616百万円、営業利益(IFRS、本社費配賦後ベース、以下同じ)は776百万円(前期は1,168百万円の損失)と大きく改善し、2期ぶりに黒字転換した。実質的な収益力を示すNon-GAAP指標での本社費配賦前営業利益でも同45.4%増の779百万円と大幅増益となった。 会社別の動向を見ると、売上規模で約36億円となったスカラコミュニケーションズでは、前期比1ケタ台の増収となり、営業利益は2期ぶりに黒字転換した。「i-ask」「i-search」等のSaaS/ASP事業の月額課金収益(MRR)が積み上がり収益増に貢献したほか、金融サービス企業から受注した大型開発案件(オートローンのWebサービスシステム)を2024年12月に納品したことが寄与した。SaaS/ASP事業のMRRは2025年6月時点で約2億円と、前年同期比で15百万円増となった。また、2023年に開始したSES事業もエンジニアが30人程度の陣容となり、期末時点で月商20百万円程度の規模に成長した。同事業は、状況に応じて社内用と外部派遣用にリソースを振り分けることで、繁忙期に発生していた外注費の削減にも貢献している。 一方、売上規模で9億円強のエッグの業績は、国策事業がプロジェクト終了により一段落したものの、ふるさと納税事業や自治体向けフレイル予防事業※が堅調に推移し、期初計画を達成した。フレイル予防事業については約20の自治体に導入が進み、年間の売上規模で1億円程度となっている。今後も社会課題解決型事業の1つとして着実な成長が期待される。 ※ エッグが開発したフレイル早期発見システムのこと。自治体公式LINEを入り口に、利用者はマイナンバーを使って個人認証を行い、スマートフォンでフレイル度判定チェックを行う仕組み。判定結果は自治体の管理システムに集約され、判定結果に基づき職員が介入指導を行うことでフレイル予防を促す。同システムを活用することで要介護支援者の増加が抑制され、住民の健康増進と介護費用の負担軽減効果に期待が寄せられている。 売上規模が約1億円となるスカラサービスは沖縄でコールセンター業務を行っている。現状はグループサービスに関わるコールセンター業務を行うなど、コストセンター的な位置付けとなっているため、利益面では若干の損失を計上し、前期比では縮小した。ここ最近は沖縄県内に支店を持つ金融機関からの案件も増えてきており、2026年6月期には黒字転換する可能性がある。 (2) 人材事業 人材事業の売上収益は前期比1.6%減の1,011百万円、営業利益は44.3%減の148百万円、本社費配賦前営業利益で同24.9%減の228百万円となった。減収減益の主な要因は、キャリアアドバイザーの人員不足が影響し、人材紹介の成約件数が減少したことだ。一方で、2026年卒学生向けの就活イベントに対する企業の出展意欲は新規・既存問わず旺盛で、出展ブースの販売は好調に推移した。なお、GeaREmakeの中途採用支援事業は、売上規模が1億円強まで成長し、下期に黒字化を達成した。 (3) TCG事業 TCG事業の売上収益は前期比1.8%増の2,277百万円、営業利益は同10.2%増の264百万円、本社費配賦前営業利益で同4.8%増の317百万円となった。売上高は連続過去最高を更新し、営業利益は2期ぶりに増益に転じた。トレーディングカードの市場規模が年々拡大するなかで、TCGの買取と販売及び攻略サイトの機能を備えたリユースECサイト「カードショップ -遊々亭-」の登録会員数が31.5万人に上った。しかし、前期に活況を呈した一部タイトルのブームが落ち着いた影響で販売額は微増にとどまった。2024年12月より開始した海外直配サービスの利用件数も順調に拡大しており、今後の成長余地は大きい。海外売上比率はまだ10%程度に過ぎない。 新たな取り組みとして、同社が社内向けに開発した在庫管理システムをトレーディングカードの卸売企業向けに販売した。売上規模で10百万円程度と見られ、今後横展開も進める方針である。また、事業拡大に備えて2025年4月には物流拠点の移転増床を実施し、保管能力が約2倍となった。 (4) インキュベーション事業 インキュベーション事業の売上収益は前期比7.2%減の273百万円、営業損失は16百万円(前期は303百万円の損失)、Non-GAAP指標での本社費配賦前営業損失は16百万円(同188百万円の損失)となった。売上収益は減少したものの、事業構造改革による固定費削減で損失額は縮小した。 ソーシャル・エックスでは「逆プロポ」各種サービスを通じて、官民共創による社会課題解決型の新規事業創出に取り組んでいる。具体的な取り組みとして、社会課題解決型スタートアップ企業に出資する「ソーシャルXインパクトファンド」を新たに立ち上げた。(一財)日本民間公益活動連携機構(JANPIA)から休眠預金を活用したインパクト投資ファンドの資金分配団体として採択されたもので、CCIグループ<7381>の投資子会社である(株)QRインベストメントとの共同申請によるものだ。出資期間は6年で、1件当たりの出資額は500〜5,000万円、シードからアーリーステージの企業を対象としている。2025年3月時点でファンド総額は6億円で、2025年末までに追加出資を募り、10億円を目指している。同社はファンドの管理報酬(運用額の2.5%)を得るだけでなく、出資先企業と自治体の共創支援により社会課題解決に取り組むほか、システム開発などの案件獲得にもつなげていく考えだ。 また、「官民共創型アクセラレーションプログラム(ソーシャルXアクセラレーション)」を(株)三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行(株)にOEM提供し、「推しごとクラウドファンディング※」として展開している。約100社のエントリー企業の中から15社がファイナリストに選定され、2025年8月に「逆プロポ」の公募を通じて自治体と31件のマッチングが成立したことを発表した。今後はソーシャル・エックスが持つ社会課題解決型の新規事業開発ノウハウ、三菱UFJ銀行の顧客基盤、三菱UFJ信託銀行の全国の金融機関とのネットワークを生かし、2026年3月まで実証実験の伴走支援を行う。実証実験の費用に関しては、自治体を起点とした「ふるさと納税型クラウドファンディング」「企業版ふるさと納税」を活用する予定で(活用方針は案件ごとに異なる)、同社は寄付金の一部を手数料収入として獲得することになる。 ※ 三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>が掲げる社会課題解決における優先10課題の解決に貢献しうるサービス・技術・アイデアを持つインパクトスタートアップを募集・選考する。 一方、スカラではこれまで培ってきた事業開発やM&Aの経験と、グループにおけるDXのノウハウを掛け合わせ、主にグロースフェーズの上場企業に対し共創型M&Aサービスを実施している。クライアントの買収企業のバリューアップフェーズにおけるDX支援なども開始し、グループ全体の総合力を生かしたサービス提供を推進している。2026年6月期以降は自社のM&A戦略も再開する方針であり、必要となるリソースを確保する予定である。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《KM》 記事一覧 |