携帯版 |
![]() |
![]() |
|
フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/09/29 13:37, 提供元: フィスコ 日本特殊陶業:事業ポートフォリオ転換と収益基盤強化で挑む次の成長ステージ*13:37JST 日本特殊陶業:事業ポートフォリオ転換と収益基盤強化で挑む次の成長ステージ日本特殊陶業<5334>は、自動車用スパークプラグと酸素センサで世界トップシェアを持つセラミックス応用メーカーである。創業以来培ったセラミック技術を基盤に、自動車関連事業、コンポーネント・ソリューション事業などを展開しており、グローバルに多様な産業分野へ製品を供給している。売上構成比は自動車関連が約8割を占めるが、近年は半導体製造装置部材やメディカル機器など新規領域にも注力し、ポートフォリオの拡充を進めている。2025年3月期には売上収益6,529億円(前年同期比6.3%増)、営業利益1,296億円(同20.5%増)と、4期連続で過去最高を更新した。背景には、内燃機関車の新車需要減少を補う形で補修用プラグ・センサの販売が堅調であったこと、また価格転嫁の浸透が寄与している。 同社の強みは、第一に自動車用スパークプラグと排ガスセンサにおける圧倒的なシェアとブランド力である。創業当初から海外市場に積極展開しており、グローバルな販売・補修網を確立している点は模倣困難な優位性となっている。第二に、セラミック技術を核とした多様な事業展開である。特に半導体製造装置向けSPE事業では、積層セラミック技術を活用し高性能な静電チャックを提供しており、生成AI需要を背景に市場拡大が続いている。第三に、強固な財務基盤と安定したキャッシュフローである。自動車関連の安定収益を原資に、窒化ケイ素関連事業への投資やM&Aを推進し、新たな成長ドライバーを獲得する体制を整えている。 2025年3月期は売上収益6,529億円(前期比6.3%増)、営業利益1,296億円(同20.5%増)と過去最高を更新した。増収の主因は、自動車向け補修用製品の需要増加とインフレ対応の価格転嫁であり、特に北米・欧州での販売が堅調であった。コンポーネント・ソリューション事業では半導体市況が上期に停滞したが、下期にかけて回復し、通期では増収となった。一方、新規事業は減収となったものの、燃料電池分野でコスト削減が進み損失は縮小している。2026年3月期は売上収益6,880億円(前期比5.4%増)、営業利益1,300億円(同0.3%増)を見込んでおり、米国関税措置によるコスト増を価格転嫁や生産地変更で吸収する方針を示している。市場環境としては、内燃機関搭載車の生産台数が漸減する一方、補修用需要は堅調で、半導体分野の回復が追い風となる。 長期的な成長見通しについては、「2030長期経営計画」で売上7,500億円、営業利益率15%以上、ROIC10%以上を掲げている。非内燃事業比率を2030年に40%まで高めることを目指し、半導体関連や窒化ケイ素など新規分野を成長ドライバーに据えている。特にSPE事業は生成AI普及による半導体需要増を背景に拡大が期待され、また東芝マテリアル買収により窒化ケイ素分野の強化を進めている。中長期的には、自動車関連の安定収益と新規領域の成長を両輪とする事業ポートフォリオへの転換が進む見込みである。 株主還元については、従来の配当性向40%からDOE基準へ移行し、安定配当に加え業績連動を組み合わせたハイブリッド型を採用している。2025年3月期の年間配当は178円(前期比14円増)、2026年3月期は182円を予定している。最新の配当利回りは3%を超えており、株主還元の積極姿勢は個人・海外投資家双方に訴求力を持つ。加えて、持続的成長を目指す中期・長期戦略の遂行力と、補修用市場での収益基盤の強さは投資家にとって安心材料となる。 総じて、同社は自動車関連の安定収益を確保しつつ、半導体や窒化ケイ素など成長分野へ積極投資を進めることで、事業ポートフォリオ転換を加速させている。今後も補修用市場の堅調さと新規分野の成長を軸に、業績拡大と株主還元の両立を実現していく姿勢に注目していきたい。 《HM》 記事一覧 |