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ビタリー・カツェネルソン/鈴木一之/関本博英 バリュー株トレーディング――レンジ相場で勝つ

バリュー株トレーディング――レンジ相場で勝つ

ベテラン度: ★★☆
ビタリー・カツェネルソン, 鈴木一之, 関本博英
パンローリング
A5判 上製本 342頁 2009年6月発売
本体 2,800円  税込 3,080円  国内送料無料です。
この商品は 12月9日に 発送できる予定です。 (発送可能時期について)

  


読者のご意見目次著者紹介監訳者まえがき
“四季報投資家”のバイブル!
PERは正しい使い方がわかる
大相場のあとのレンジ相場で確実に利益を確保する方法

今後数十年間のアメリカ株は、新高値を付けたかと思えば数年来の安値に落ち込むなど、ジェットコースターのような激しい乱高下を繰り返すだろう。こうした激しい動きはまだ過去の事実にはなっていないが、18年に及ぶ長期の大強気相場が2000年に終了したあとを受けて、これからトレンドのない長いレンジ相場が続くのは間違いないだろう。こうした変動の大きいレンジ相場で相応の利益を手にするのは、それにふさわしい投資戦略を持っている投資家だけである。

この厳しい投資の現実をだれよりもよく理解しているのは、優れたファンドマネジャー兼投資教育家、そして著述家でもあるビタリー・カツェネルソンであろう。

彼は本書のなかで、前の強気相場で大きな利益を上げた従来のファンダメンタルズ手法に磨きをかけ、レンジ相場向けに改良したアクティブなバリュー投資法をあますところなく公開している。この本はちまたにあふれている単なるバリュー投資の解説書ではない。前の強気相場の名残である高水準のPERが続く厳しい投資環境のなかで、多くの投資家がリターンと資金の喪失に悩んでいるとき、本書は相応の利益を手にするための深い洞察とタイムリーな投資テクニックが盛り込まれた実践的な指南書となるだろう。

本書の第1部では、過去200年にわたる米国株式市場のヒストリカルな推移とパフォーマンスを分析し、長期の強気相場・弱気相場・レンジ相場をもたらした要因を検証している。続いてそうした長期相場を支配していた人間の心理、現在の米国株式市場が長期のレンジ相場に突入した可能性、このレンジ相場がどれくらい続くのか――といったことが詳細に検討されている。

そして第2部ではこうした現実を踏まえて、われわれ投資家はどのように対処すべきかという戦略が述べられている。具体的には優良企業の条件とその株式を適正な価格で購入するための方法、すなわち現在のレンジ相場に適切に対処するためのアクティブなバリュー投資の実践法が明らかにされている。こうしたアプローチのベースとなるのが、企業の質・成長・評価という3つの条件の分析である。

そして最後の仕上げとして、優良企業の株式の買いと売りの方法、それを成功させるためのリスクと分散投資の考え方に焦点が当てられている。


著者紹介

ビタリー・カツェネルソン(Vitaliy Katsenelson)
1994年に株式投資の世界に入り、現在はインベストメント・マネジメント・アソシエイツのファンドマネジャーとして、ファンダメンタルズ分析に基づいて機関投資家や個人投資家の資金を運用している。コロラド大学デンバー校経営大学院の非常勤教授を務め、またフィナンシャル・タイムズ、ダウ・ジョーンズ社のマーケットウォッチ、ミニアビル・ドット・コムなどに定期的に寄稿している。公認証券アナリスト(CFA)としてコロラド州CFA協会理事、リタイアメント・インベストメント・インスティチュートの理事も務める。コロラド大学でファイナンス論の学士号と修士号を修得、優等で卒業した。著者のウエブサイトは「http://ContrarianEdge.com」または「http://ActiveValueInvesting.com」。


本書への賛辞

「この本は著者の思考プロセスを通って、われわれにアクティブなバリュー投資というものを教えてくれる。従来のバリュー投資の本では保有株の売却は論じられていないが、本書ではこの問題も詳しく取り上げられている。理論的な話、実際のケーススタディ、常識に基づく観察という点で、ほどよくバランスがとれている」――『
黒の証券』の著者デビッド・アインホーン氏

「本書を読むと、これからの株式相場は一本調子のトレンドを描くのではなく、激しい乱高下の局面が続くと予想している。こうしたレンジ相場では、優良株をどれだけ有利な価格で買うのかが最終的なリターンを決めるカギとなる。レンジ相場でこうした優良な割安株を手に入れるには、従来の考え方にとらわれないフレキシブルな分析能力が必要であり、本書にはそのための3つの条件が示されている」――『バイ・アンド・ホールド時代の終焉』の著者エド・イースタリング氏

「不確実なこれからの投資環境のなかで、カツェネルソンの投資テクニックはその嵐を乗り切るものとなるだろう」――『ヘッジファンドの錬金術』の著者ジェームズ・アルタッチャー氏

「優良企業の価値と、マーケットの変動がポートフォリオのパフォーマンスにどのような影響を及ぼすのかといった2つの問題に焦点を当てた珍しい本だ。この2つの重要性を理解した投資家は、いろいろなマーケットの局面にもフレキシブルなスタンスで臨むことができるだろう。専門的な洞察が加えられた投資教育書と楽しい娯楽書という2つの面を併せ持つのが本書だ」――『ギャンブルトレーダー』の著者アーロン・ブラウン氏

「この本を読むと、まるでカツェネルソンと話しているようだ。本書は深い洞察と旺盛な好奇心にあふれ、そして何よりも洗練されている」――『まぐれ』の著者ナシーム・ニコラス・タレブ氏

「アクティブなトレーダーと長期投資家のどちらにも役立つ貴重な本である」――ミニアビル・パブリッシング&マルチメディアの創設者兼CEOであるトッド・ハリソン氏

「勘と経験に基づくデイトレーダーやバイ・アンド・ホールドの投資家を問わず、企業の適正価値を見極めるスキルを持たない投資家はマーケットで生き残っていけないだろう。本書は企業の適正価値を分析し、それを踏まえた売買アプローチで利益を上げようというものである。ここにはマーケットのいろいろなノイズを排除し、長期投資の勝者となるためのスキルと戦略が盛り込まれている。強気相場と弱気相場は絶えず入れ替わっていくが、本書に示された投資のコツはどのような局面でも有効である。その意味ではあらゆるマーケットの局面で使える万能の投資ガイドだ」――ミニアビル・ドット・コムやCNBCのファースト・マネーの定期寄稿者であるジェフ・マッケ氏

「本書には強気相場でも弱気相場でもない難しいマーケットの局面で、個人投資家や機関投資家でもうまく対処できる方法が簡潔に述べられている。多くの株式投資の本では主に上昇局面で利益を上げる方法しか示されていないが、本書ではトレンドのないレンジ相場に対処するアプローチがこれまでとは違う観点から、しかもユーモラスに述べられている」――大手ヘッジファンドであるシーブリーズ・パートナーズ・マネジメントのダグラス・カス社長

「読みやすく、しかもユーモアにあふれている素晴らしい投資本だ。しかも初心者とベテランのどちらの投資家にも役立つ。本書ではレンジ相場のアプローチとして主にアクティブなバリュー投資法について論じられているが、これは強気相場や弱気相場でも十分に使える。当社のニュースレターの購読者たちにも薦めたいね」――モトリー・フール・インサイド・バリューのアドバイザーであるフィリップ・デュレル氏

「カツェネルソンは株式投資の世界に大きな貢献をしてくれた。広範な知識と実証で裏付けられたこのアクティブなバリュー投資法があれば、これからの長いレンジ相場も乗り切れるだろう。低いリターンと資金の永久喪失というリスクがある今の厳しい投資環境のなかで、本書にはその具体的な対処法が示されており、すべての投資家にとって福音となる」――ドレスナー・クラインオート・ワッサースタイン証券のグローバル・エクイティ・ストラテジストであるジェームズ・モンティア氏

「カツェネルソンは2つの能力を併せ持つプロである。そのひとつは、マーケットのノイズを一掃し、市場平均を打ち負かす高いリターンを上げる優れたファンドマネジャー。もうひとつは、複雑な投資のコンセプトを分かりやすく説明してくれる投資教育家。本書は彼のこうした2つの能力が十分に発揮された素晴らしい投資本だ」――モトリー・フールのヒデン・ジェムズ(Hidden Gems)ニュースレターのアドバイザーであるビル・マン氏


目次

監訳者まえがき
まえがき
序文

第1部 将来の展望

第1章 はじめに――レンジ相場の到来
あまり大きな期待を抱かないで、シートベルトをしっかりと締めよう
レンジ相場を動物にたとえると
長期相場と循環相場
長期の強気・弱気・レンジ相場の違い
100年以上の歴史を見ると
長期的には株式が有利
アメリカ以外でもやはり株式のほうが有利
金はまた輝くのか
金に対抗する金融商品
大局的に見たときの間違い
強気相場の高いリターンは次のレンジ相場で帳消しに
短くなる投資期間

第2章 長期の強気・弱気・レンジ相場の心理
幸福な強気相場
悲しい弱気相場
長期のレンジ相場とはどのようなものか
強気相場とレンジ相場のボラティリティ

第3章 株式市場の数学
キャピタルゲインの源泉――企業の利益成長
キャピタルゲインの源泉――PER
配当利回りの源泉
なぜ強気相場のあとにレンジ相場が到来するのか
PERはいつ底を打つのか

第4章 債券――株式のライバルとなる投資対象か
債券投資
レンジ相場ではアセット・アロケーションの重要性が低下

第2部 アクティブなバリュー投資法

分析論

第5章 企業の質
競争上の優位性
経営陣
予想可能な利益
健全なバランスシート
フリーキャッシュフロー
高いROC
結論

第6章 企業の成長
企業の成長の源泉――利益の成長と配当
過去は過ぎゆく
将来の成長の原動力
配当
利益成長は大切な条件

第7章 企業の評価
牛乳屋テビエの評価法
相対評価法
絶対評価法としてのDCF法
相対評価法と絶対評価法
絶対評価法
数学の間違い
絶対PERモデル
割引率モデル
安全域モデル
絶対PERモデルと安全域モデルの併用
いろいろな分析モデルの併用
低いPERのバリュー投資と高いPERのグロース投資のリターン比較

第8章 企業の質・成長・評価という3つの条件に照らした企業の分析
3つの条件による企業の具体的な分析
3つの条件のうち、ひとつだけをクリアした企業
3つの条件のうち、2つをクリアした企業
結論

株式の売買戦略

はじめに――投資のプロセスと規律の大切さ

第9章 買いのプロセス――求められるのは規律ある行動
大切な投資のプロセスと規律
長期的に考え、短期的に行動する
新しい友のボラティリティを味方につける
マーケット全体ではなく、個別銘柄のタイミングを計る
現金は王様
チャンスが来たら行動を起こす

第10章 買いのプロセス――逆張り投資
逆張り投資とは
そんな株式は買わなくてもいいんだよ
ミスバスターになろう
すべてを定量化し、逆張り投資家になろう
タイムアービトラージ
新しいアイデアを見つける
自分でリサーチし、その結果を書き留めること

第11章 買いのプロセス――グローバルな投資
フラット化する世界
会計基準の統合
国境のないグローバル企業
政治リスク
アメリカの政治リスク
自分の快感帯から出発する
高成長国=有望な投資国ではない
為替変動リスク
どれくらいのお金を振り向けたらよいのか
結論

第12章 売りのプロセス――ダーウィニズムの考え方
株価が上昇したときに売る
ファンダメンタルズが悪化したときに売る
結論

リスクと分散投資

第13章 リスクのいろいろな考え方
リスクとは何か
ランダム性の特徴
クロコダイルハンターとランダム性
企業の質・成長・評価という3つの条件とそれらの相互関係
株主価値の破壊要因の影響を予想する
間違ったときのコスト
結論

第14章 分散投資のいろいろな考え方
すべての投資資金を賭けるな
多すぎる卵、または多すぎるかご
「心の会計」と分散投資
株式ポートフォリオにおける心の会計とランダム性
ランダム性を友にする

第15章 まとめ
私は間違っているのだろうか
強気相場
弱気相場とレンジ相場
債券投資
やはり私は間違っていないと思う


監訳者まえがき

この書籍はバリュー株に関する真摯な投資法の研究書である。同時に20世紀を通じた100年間に及ぶアメリカ株式市場の歴史書でもある。

著者は1900年以降の膨大なヒストリカルデータの分析に基づいて、過去100年間にわたる偉大なるアメリカの株式市場の軌跡をあまさず描き出し、そのなかから現代に通じるひとつの極めて重要な法則を見いだしている。それは、「長期の強気相場のあとには、弱気相場ではなく、長いレンジ相場が訪れる」というものである。

今本書を手にとられている方は、早速29ページの「図表1.1」をご覧いただきたい。そこには1900年以降のダウ工業株平均株価が描かれており、20世紀の100年間は実に全期間の半分以上がレンジ相場であったことが示されている。

著者によればレンジ相場とは、株価が横ばいかトレンドのない相場のことである。動物にたとえれば、鶏、羊、あるいは「臆病なライオン」である(ブル、ベア、ピッグ、カモまで含めて株式市場にはたくさんの動物が生息しているものだ)。レンジ相場ではPER(株価収益率)の大幅な低下がもたらされる。

レンジ相場の恐ろしさはそれまでの強気相場での手法がまったく通用しなくなる点にある。すなわち、強気相場の主役であった成長株は、その後のレンジ相場でも企業としての成長は続くのだが、そこではPERが大幅に低下するため、成長によるリターンだけでは株価の下落をカバーしきれない。本書の最初のヤマがこの辺りを詳述した部分にある。

したがってレンジ相場では、キャッシュフローを潤沢に生む高配当企業を選び出し、株価の安全域を十分に確保した株式投資を心がけなければならない。この基準こそが本書が執筆された真の目的であり、そのための銘柄選択の条件を述べた部分が本書の二番目のヤマとなる。

著者であるビタリー・カツェネルソンは、1990年に共産主義が崩壊した直後のロシアから米国に移住してきた投資家兼著作家兼投資教育家である。自由の国アメリカで新たな人生のスタートを切り、株式市場の魅力に引き寄せられ、株式投資が好きで好きでたまらず、とうとうコロラド大学で株式投資に関する講座まで持つに至ったガッツあふれる人物である。

原著のタイトルは“Active Value Investing”。直訳するならば「アクティブなバリュー株投資」となるだろうか。運用の世界では「アクティブ」と銘打たれたものは、グロース株(成長株)志向を標榜していることがほとんどである。地味な印象の強いバリュー株だが、著者はあえて本書を「アクティブな」バリュー株投資と名づけた。著者の意気込みがひしひしと伝わってくる... (全文を読む)

(ウィザードブックシリーズ154)

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