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フィスコ投資ニュース

配信日時: 2025/12/18 12:01, 提供元: フィスコ

大豊建 Research Memo(1):事業基盤の強化により中長期的な企業価値向上へ、積極的な株主還元方針にも注目

*12:01JST 大豊建 Research Memo(1):事業基盤の強化により中長期的な企業価値向上へ、積極的な株主還元方針にも注目
■要約

大豊建設<1822>は、土木及び建築を中核とする総合建設業者であり、特に高い技術力を背景に、都市インフラ整備や地中構造物の分野に強みを持つ中堅ゼネコンである。トンネル工事や地下空間の開発において高い競争力を誇っており、なかでも、「シールド工法」をはじめとする地下トンネル工事に関しては、都市部における限られた空間での施工技術、安全対策、環境負荷低減への配慮といった観点での対応力が特に評価が高い。また、土木に強みを持ちながらも、建築分野でも一定の存在感を示しており、とりわけ物流施設や再開発案件においては、顧客ニーズに応じた柔軟な設計・施工体制を構築している点が特徴である。大手ゼネコンとは異なり、選択と集中により得意分野に特化した競争戦略を採用することで、堅実な収益基盤を築いている。近年では、環境配慮型の施工技術やICTを活用した施工管理の高度化にも注力しており、安全性と効率性を両立する取り組みが評価されている。

1. 2026年3月期中間期の業績概要
2026年3月期中間期の連結業績は、売上高が前年同期比3.6%減の65,192百万円、営業利益が同43.0%増の895百万円、経常利益が同208.5%増の1,060百万円、親会社株主に帰属する中間純利益が同91.1%減の43百万円となり、期初計画(売上高63,000百万円、営業利益400百万円)を上回って着地した。土木事業では、繰越案件の中で大きな割合を占めている大型JVサブ工事において、利益率の低い工事が進捗した影響でやや苦戦したものの、建築事業の収益性が改善したことにより補完し、営業利益は前年同期比43.0%増と大幅拡大した。なお、経常利益、親会社に帰属する中間純利益は会社計画を下回ったものの、これは第2四半期に計上予定であった投資事業からの配当金14億円の受領が下期にずれ込んだことによる。受注高は前年同期比23.5%減の66,671百万円であり、期初計画の64,031百万円を上回った。土木事業については入札競争における受注獲得率が伸び悩んだものの、建築事業については官公庁向け案件の獲得などにより計画対比23.4%上振れた。全社としては計画を上回る水準で受注を確保しており、今後も適正利潤の確保と安定的な受注拡大の両立に向けた取り組みが注目される。

2. 2026年3月期の業績見通し
2026年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比2.4%減の140,000百万円、営業利益が同6.0%減の5,200百万円、経常利益が同23.0%増の6,400百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同8.4%増の4,000百万円と、減収ながら経常利益及び当期純利益は増益を確保する見通しである。利益面について事業セグメントごとに見ると、建築事業については前期から推進してきた選別受注の成果により、利益率の高い案件への入れ替えが進展している。売上総利益率は、採算性の向上により前期比1.8ポイントの改善が期待される。他方で、土木事業については繰越案件の中で大きな割合を占める大型JV(Joint Venture:共同企業体)におけるサブ工事の利益率改善が課題となっており、全体の収益性をやや圧迫する要因になると見込まれる。また、コスト面では人件費が継続的な賃上げの影響により増加基調にあることなどから、全社ベースの営業利益率は同0.2ポイントの低下が見込まれる。他方で、経常利益については前期を1,195百万円上回る計画となっている。これは主に、同社が出資している特定目的会社(SPC)を通じて手掛けている物流施設の開発事業において、同施設の売却に伴い下期に配当収入が発生し、営業外収益を押し上げる見通しによる。

3. 中長期の成長戦略
同社は2023年5月19日に2028年3月期までの中期経営計画を公表したが、計画開始してから2年間で建設資材及び人件費の急騰、品質確保にかかる追加費用の発生などにより、採算が大きく悪化し、業績目標が未達となった。こうした状況を受け、基本方針自体は維持しつつも、外部環境の変化に対応できるように内容の見直しが行われ、2025年5月9日に中期経営計画のアジャスト版を新たに公表した。中期経営計画の定量目標は、2028年3月期に売上高1,600億円、営業利益67億円、営業利益率4.2%、当期純利益46億円、ROE7%程度を掲げており、これらの実現に向けた重点施策が示されている。直近3年間の重点課題は内部統制の強化である。具体的には、物価変動を契約に反映できるように物価スライド条項(工事の契約締結後に行われた賃金や物価の変動が一定程度を超えた場合に、請負代金額の変更を請求できるという条項)を標準化すること、受注の選定やリスク管理を含めたマネジメント体制の強化、モニタリング機能を充実させた施工管理体制の再構築などが挙げられる。

なお、同社は株主還元の強化に向けて配当方針を転換しており、2025年3月期以降は従来の株主優待を継続しつつ、配当性向を70%以上に引き上げた。2026年3月期は年間配当32.0円、配当性向70.5%を計画しており、高水準の株主還元を継続する見通しである。

■Key Points
・土木事業では高度な独自施工技術を有しており、他社との差別化を実現
・2026年3月期中間期は建築事業の収益性が大きく改善し、売上高・営業利益ともに期初計画を上振れた
・2026年3月期は営業減益も、経常・最終利益は増益の計画。事業構造改革を進め収益基盤の整備へ

(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)


《HN》

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