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フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/09/30 13:05, 提供元: フィスコ アンジェス Research Memo(5):慢性椎間板性腰痛症を対象とした第2相臨床試験の結果は2027年発表見込み*13:05JST アンジェス Research Memo(5):慢性椎間板性腰痛症を対象とした第2相臨床試験の結果は2027年発表見込み■アンジェス<4563>の主要開発パイプラインの動向 2. NF-κBデコイオリゴDNA(AMG0103) NF-κBデコイオリゴDNAは、人工核酸により遺伝子の働きを制御する「核酸医薬品」の一種で、生体内で免疫・炎症反応を惹起する転写因子と呼ばれるタンパク質(NF-κB)に対する特異的な阻害剤である。NF-κBが遺伝子の特定のDNA配列領域に結合し、スイッチが入ることで痛みなどの炎症の原因であるタンパク質が生成されるが、NF-κBデコイオリゴDNAを体内に入れることで、炎症を引き起こすタンパク質を生成する遺伝子領域とNF-κBが結合しにくくなり、炎症の原因であるタンパク質の生成を抑制する。 NF-κBデコイオリゴDNAの国内第2相臨床試験は、2023年3月に塩野義製薬との協力に関する契約(臨床試験費用の一部を負担)を締結し、同年10月から慢性椎間板性腰痛症※を対象として開始した。予定症例数を92例とし、最初の2例で最大投与量20mgの安全性試験を実施し、安全性及び忍容性が確認された。その後、10mg、20mg、プラセボの3群(各30例、単回投与)に分類した比較試験を実施している。観察期間は12ヶ月で、有効性については「痛み」の指標であるNRSスコアの変化で評価する。現在、20mg投与群の被験者登録が進んでいるが、予定よりも若干ペースが遅れぎみとなっている。2025年内の被験者登録完了を目指しており、2027年内には臨床試験の結果が発表される見通しだ。良好な結果が得られた場合、ライセンスアウトする意向だが、塩野義製薬との協議次第となる。 ※ 慢性椎間板性腰痛症とは、3ヶ月以上痛みが持続し、椎間板が原因で起こる腰痛症を指す。慢性腰痛症の約40%を占めるとされている。臨床試験対象者は、18〜75歳で腰痛のNRSスコア(自己申告による痛みの指標)が臀部痛や下肢痛のNRSスコアよりも大きい。腰痛に対する保存的治療で効果が不十分な患者で、かつスクリーニング時点、及び投与実施日と前日のNRSスコアが4〜9の患者(中等度から強い痛み)としている。また、複数個所に痛みを持つ患者は除外している。 国内の臨床試験に先駆けて米国で2018年より実施した後期第1相臨床試験(プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験、25症例、観察期間50週)の結果についての論文が、2025年5月に脊椎疾患専門の学術誌「The Spine Journal」※に掲載された。安全性及び忍容性に問題がなかったほか、有効性においても投与量3群(0.3mg、3.0mg、10.0mg)のうち最大投与量群において投与後早期に腰痛が大幅軽減し、1年後には投与前と比較して痛みのスコアが平均77%軽減(プラセボ群では平均40%)したほか、同投与群に関しては治験期間を通して鎮痛薬を追加投与された症例がなく、鎮痛効果が持続していることが示唆された。詳細に見ると、同投与群のうち、半数の患者の痛みがほぼ完全に消失した。また、椎間板の高さについてもプラセボ群が減少したのに対し、10mg投与群では増加が認められ、椎間板の形態的な改善効果が示唆される結果が得られたとしている。日本の臨床試験では米国の最大投与量を上回る20mg群の試験も行っていることから、好結果を得られる可能性が高いと弊社では見ている。 ※ 「The Spine Journal」は、北米脊椎学会が発行する脊椎外科に関する研究論文やレビュー、症例報告などを掲載する脊椎疾患分野を代表する国際的な学術誌で各国から寄せられた質の高い論文を隔週で提供している。 国内では慢性椎間板性腰痛症の患者に対して、内服・外用薬治療や理学療法など対症療法が一般的に行われているが、AMG0103は単回投与で1年間の効果持続が見込まれるため、患者のQOL向上に貢献する。開発に成功すれば、慢性椎間板性腰痛症に使用される世界初の核酸医薬品となる可能性があり、2027年に発表される臨床試験の結果が注目される。 「AV-001」は2025年内に臨床試験結果が判明する見通し 3. ARDS治療薬(Tie2受容体アゴニスト) カナダのVasomuneとの共同開発品であるARDS治療薬「AV-001」(Tie2受容体アゴニスト)※は、2018年より全世界を対象に急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患の治療薬として共同開発を進めてきた。中等度から重度の新型コロナウイルス感染症肺炎患者向けの治療薬としても効果があると見て、2022年1月より米国で前期第2相臨床試験を実施している。しかし、新型コロナウイルス感染症の変異株では重篤な肺炎を発症する感染者が急減したことから、現在は対象疾患をインフルエンザ等のウイルス性及び細菌性肺炎を含むARDSに拡大し(FDA承認済み)、予定症例数は60例で、そのうち最終コホートは20例で臨床試験を進めている。前期第2相臨床試験の60名を投与量で3群に分け、「AV-001」と標準治療薬またはプラセボと標準治療薬のいずれかを投与し、安全性及び忍容性と有効性を評価する。 ※ 同社は2018年にVasomuneと、急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした「AV-001」の全世界を対象とした共同開発契約を締結した。開発費用と将来の収益を折半し、また、同社がVasomuneに対して契約一時金及び開発の進捗に応じたマイルストーンを支払う契約となっている。ARDSの患者数は米国だけで26万人いる。 2025年8月時点で最終コホートの登録が進行中であり、順調に進めば秋ごろに被験者登録を完了し、年内にもトップラインデータが判明する見通しだ。良好な結果が得られればライセンスアウトする意向だが、後期第2相臨床試験でも引き続き開発助成金を得られる可能性があるため、独自で臨床試験を進めることも考えている。「AV-001」は2024年5月に米国FDAからFast Track※に指定されており、臨床試験に関する協議や審査などの手続きを迅速に進めることが可能となっている。 ※ 重篤な疾患に対する新たな治療法やアンメット・メディカル・ニーズを満たす可能性のある薬剤などの開発を促進し、迅速に審査することを目的に制定された制度。 また、新たに血液透析患者における急性虚血性脳損傷の予防を目的とした医師主導臨床試験の開始を決定した。同研究はカナダ心臓・脳卒中財団の助成を受けて実施され、血液透析によって引き起こされる細胞毒性脳浮腫を軽減し、脳の白質の機能を維持できるかを評価する試験となる。良好な結果が得られれば、より大規模な試験が検討される。末期腎不全患者の最大90%が血液透析を利用しているが、55歳以上の患者の約70%が細胞毒性脳浮腫となり、中等度から重度の認知障害を引き起こすなど医療現場において大きな課題となっている。「AV-001」はTie2/Angiopoietin-1シグナル伝達経路を標的とすることで、血管を安定化させ、血管漏出や炎症を抑制する効果が期待でき、細胞毒性脳浮腫の軽減により血液透析患者の脳の機能を守る新たな治療法となる可能性がある。臨床試験費用は助成金で賄われるため同社のコスト負担もなく、今後の開発動向が注目される。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《HN》 記事一覧 |