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究極のトレーディングガイド

ジョン・R・ヒル/ジョージ・プルート/ランディ・ヒル著 パンローリング

私はシステムトレード暦2年、TradeStationを使った米国株トレーダーである。その 間システムトレーデング、デイトレーディングの本を洋書だけで50冊以上読破して きた。以前からこの本に興味を持っており、原書を取り寄せようと思っていたとこ ろ、タイミングよく訳書が出版された。期待を抱いて読み始めたが、その期待を裏切 らない内容で、私の蔵書に最も価値のある一冊として加えられることになった。この 書評を書くにあたり、合計3回通読したが、非常に読み応えがあり、読むたびにト レーディング手法に関する新たな発見やひらめきがあった。

この本は「究極のトレーディングガイド」と仰々しいタイトルが付けられているが、 決して「あなたも毎月○○万円儲けられる」といった類の本ではないし、聖杯(ホー リーグレイル)のトレーディングシステムについても明かされていない。ただ、どの ようにしてトレーダーとして成功するか、生き延びていくかについて現実的な方法が 著されているだけである。監修者まえがきに長尾氏が「実際、私の周囲では「儲かる 手法」は何か?ということが話題になることはもうほとんどない。なぜなら、ほとん どの人はそれらをすでに知ってしまっているし、それ以外の道のやり方でも、わずか のヒントや知識の断片さえあれば、あっという間に有効性を検証、把握することがで きるからである。こういった状況下にあっては、私たちの関心はもっぱら「どうやっ たらその優位性を現実の世界で具現化できるか?」という極めた実務的な要素に絞ら れることになる」と書かれている。「究極のトレーディングガイド」はまさしくその マーケットでの優位性(エッジ)をトレーダーが認識し、具現化するのを助けるため に書かれた本である。

本の構成は前半がチャートパターン認識、後半がトレーディングシステムの検証に当 てられている。まずは価格の動きを高い確率で予測できるチャートパターンの認識方 法を学び、そのパターンをトレーディングシステムとして構築してメカニカルにト レードする方法を学ぶというのが大きな流れだ。前半は非常に多岐にわたる短期の チャートパターンについて説明されており、チャートパターンの百科事典のようだ。 短期トレード向け仕掛けと利食いのチャートパターンだけでも19種類も紹介されて いる。著者はそれらの膨大なパターンのうちどれが最もよいパターンかまでは明確に してくれていない。全てのアイデアに対して、有効性を検証するバックテストの結果 が掲載されているわけではない。つまり、筆者は様々なヒントやアイデアを提供して くれてはいるが、それが本当に自分がトレードで使う銘柄や指数に有効かどうか、ど れが自分にとっての究極のトレーディング方法となるかは我々読者の力(経験、ひら めき、検証)にかかっているのだ。そのため、この情報をを読みこなし、自分のト レーダーとしての血とするにはある程度のトレード経験と、基本的なテクニカル分析 とマネーマネージメントの知識が必要である。

後半は、どのようにかつシステムを設計、開発し、トレードするかについての実用的 なガイドで占められている。そこでは、バックテストによる検証データを基に、チャ ネルブレイクアウトなど言ったシンプルで明瞭なシステムが堅牢であり、長期にわた り機能し続けるということを証明してくれている。実際彼らが最も堅牢と評価した5 つのトレーディングシステムはどれもロケット工学のような高度なものは使われてい ない。(これらのシステムの詳細については、実際に本を手にとって学習してほし い)ポートフォリオマネジメントおよびマネーマネージメントに関しては、私がこれ までに読んだその分野に関する翻訳書のなかでも上質の部類に入るといえる。 10000ドルから始まる様々な資産レベルでの多様なポートフォリオや異なるリス クリウォードレシオで利益率を検証し、リスク分散とストップロスの重要性、パラ メーター最適化の罠について説得力溢れた説明がされている。私はこれらの後半のシ ステムに関する章で何回か目からうろこが落ちる瞬間を経験した。私のように自分で ExcelやVB、Tradestationなどでトレーディングシステムを構築・検証している中級 者・上級者ならば、多くのインスピレーションを受け、自分のトレーディングシステ ムがさらに堅牢になるに違いない。そのレベルの人には、この本にちりばめられたア イデアで5800円は安い。著者らが長年の調査の結果もっとも有効と評価されたベスト 5の手法とそのEasyLanguage のソースコードも惜しみなく紹介されているのでそれ らの情報だけでも十分に元が取れる価値がある。それを元にこの本から得られた自分 のアイデアをシステムに織り込んでいけば、自分にとっての究極のトレーディングシ ステムの開発も可能だろう。(ただし、Codeは2000i用に書かれているため、若干の 手直しが必要。)

以上、この本の優れた点について言及してきたが、不満な点もいくつかある。一つは チャートパターン認識パートのテクニカルアナリシスツールとしてドラモンドジオメ トリーとPLラインについてまるまる一章紹介に費やされているが、そのわりに説明は 中途半端の感がぬぐえないし、またその有効性を検証したバックテストの結果も示さ れていない。前後の章とのつながりもなくその章だけ他と乖離しているような感覚を 覚えた。この章がない方が、よりまとまった印象になったのではないか。もう一つの 不満点であるが、チャートパターンを説明するために使われているバーチャートモデ ルがいかにも素人が書いたような代物でいただけない。これはオリジナルがそうなっ ているからかもしれないが、著者の承諾を取り付けて、図やチャートをより見やすく するといった改良をしてもいいのではないだろうか。(この点は他のウィザードブッ クにもいえることだ。オリジナルをそのまま使用しているのでチャートや図が非常に 読みにくい。)

しかしこれらの不満点もこの本が与えてくれた数多くのアイデアとインスピレーショ ンに比べると物の数ではない。改めていうが、この本は初心者トレーダー向けではな い。ある程度の知識がないとこの本を読んでも、アイデアをを十分に活用できないで あろうし、おそらく本書で提示される無数の情報の海におぼれてしまうであろう。し かし、これまでより数%システムパフォーマンスの年間利益率を向上させたいという レベルのセミプロレベル以上のトレーダーや、タープ博士やラリー・ウィリアムズの 著書に感銘を覚えた読者には、トレーディングスキル/システム精度の更なる向上と いう目的でこの「究極のトレーディングガイド」は、何の躊躇なくお勧めできる本で ある。

[30代、メカニカルトレーダー、経営コンサルタント]

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