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ウォール街のランダム・ウォーカー 原著第9版

バートン・マルキール, 井手正介 日本経済新聞社

 本書は株式投資関連の書籍としては非常によく知られた一冊である。今回の第9版 は旧版が改訂されたもので、新たにITバブルや行動ファイナンスに関する内容が加 わっている。全体のページ数にはさほと変化がないため、削除された内容もある。

 著者のマルキール先生は、いわゆる効率的市場仮説の大御所として知られている。 実際の投資方法に即して言えば、これは「あれこれ売買するよりもインデックスファ ンドに投資した方がよほどよい」とまとめられるだろう。

 著者自身も述べているが、このアプローチは、多分多くの場合正しいのだと思う が、率直に言って面白くはない。あれこれ銘柄選択や売買タイミングを考えて投資す る方が楽しいのである。但し、その「楽しさ」が投資の成果に本当につながっている のかどうかは、自分自身の投資の記録をふりかえってみて吟味が必要であり、もしう まくいっていないのであれば、マルキール先生の助言に従う方がよいのかもしれな い。

 本書ではまず繰り返されてきたバブルの歴史について述べられている。これらはす べて後講釈であり、その渦中にいる時に、なかなかその場から離れた場所で立ってい ることは難しいのかもしれない。現在であれば、例えば中国株について「バブルでは ないか」あるいは「バブルである」といった指摘がある。私自身、中国株に投資を し、相当程度の利益が出ているが、この点については留意が必要であると思っている。

 また、旧版からずっと一貫してテクニカル分析もファンダメンタルズ分析もそんな にあてになるものではないという主張が述べられている。この点についてはほとんど 本書の指摘に同意するところである。とりわけ私自身が好きなのは、「詳細な調査に よると、テクニカル信者には、穴のあいた靴や襟の擦り切れたシャツを身にまとって いる者が多いということが知られている。」という一節である。無論、これはマル キール先生のしゃれっ気である。

 時々誤解があるようだが、マルキール先生は効率的市場仮説を全面的に肯定してい るわけではない。まあ、常識で考えても市場が個別銘柄の値動きなども含めて完全に 効率的であるはずはないのであり、そこにはつけこむチャンスはあると考えるのが当 然ではあろう。ただ、同時に、そのチャンスを有効に利用し続けることは極めて困難 であろうことは本書を通読すれば理解できるだろうと思う。

 本書で述べられている内容の中で一つだけ見解が大きく異なる点があった。IPO 投資についての指摘である。本書ではこれについて否定的な見解が述べられている。 趣旨はわかるのだが、自分自身の経験に照らした場合、ここは大きく異なる。私自身 が実際に行った経験があるのは、日本および中国市場でのIPO銘柄の公募株取得と 売却であるが、これは相当程度の利益につながっており、全体として自分の日本株へ の投資の成績が日経平均等の指数を上回る状況となっているのは、このIPO効果に よるものである。これについては、市場の雰囲気が悪くない時に参加をすること、有 望と思われる銘柄にのみ参加すること、公募株を取得し短期で利益を確定することを 原則とすること、といった条件で行えば、短期的に良好なパフォーマンスをあげられ る可能性が高いと考えており、事実、IPO銘柄への投資全体としてはそのように なっている。これは「より馬鹿」理論に立脚した投資方法と言えよう。今後もこの方 法については続けていくつもりである。

 本書は翻訳のよさもあって、分厚い書籍ではあるのだが、全体として非常に読みや すく、専門知識がなくても十分に理解できる内容となっており、翻訳物特有の「隔靴 掻痒感」もない点はすばらしい。見解のすべてを受け入れるかどうかは別にして、株 式投資を行っていこうとするのであれば、本書は通読しておく意味のある良書であ り、株式投資関連の書籍の中では「名著」の一つとして挙げられるべき書籍だと考え る。

(ふしみん 40代 公務員)


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