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フィスコ投資ニュース

配信日時: 2025/07/29 12:53, 提供元: フィスコ

コスモエネHD:環境変化を見極めながらNew領域への取り組みも継続、PBR1倍割れかつ配当利回り5%超え(2)

*12:53JST コスモエネHD:環境変化を見極めながらNew領域への取り組みも継続、PBR1倍割れかつ配当利回り5%超え(2)
「コスモエネHD:環境変化を見極めながらNew領域への取り組みも継続、PBR1倍割れかつ配当利回り5%超え(1)」の続き

コスモエネルギーホールディングス<5021>の2025年3月期の売上高は2兆7,999億円(前期比2.6%増)、在庫影響を除いた経常利益は1,816憶円(11.9%増)と安定した水準を維持した。石油事業で堅調な国内マージンやトラブル影響の解消が寄与、石油開発は円安影響に加えて数量・価格が増加、石油化学はエチレンを中心とした市況低迷の影響も数量増でカバーした。全体業績に占める割合は小さい再生可能エネルギーは風況悪化等が響いた。

2026年3月期の会社計画では、在庫影響を除いた経常利益は1,650億円(前期比9.1%減)、当期純利益は840億円(6%増)を見込む。前提条件としては、ドバイ原油価格65ドル(2024年度実績79ドル)、為替レート1ドル145円(同153円)、と原油価格の下落と円高を織り込んでいる。まず石油事業では、インフレによるコスト増加の影響を受けるものの、堅調な国内マージンやトラブル影響の解消による製油所の稼働率改善が収益を下支えする見通し。石油化学事業については、依然として市況の低迷が続くものの、定期修繕の影響がなくなることや基礎化学品の生産最適化など事業構造改善による改善効果が期待されている。石油開発事業では、原油価格の下落や為替の影響により減益が予想されるが、ヘイル油田において水攻法(すいこうほう)を通年で実施することにより、2025年度は通年で生産量の増加が見込まれている。再生可能エネルギー事業では、新たな発電サイトの稼働が始まることにより、収益の拡大が期待されている。

市場環境としては、エネルギー需要の中長期的な堅調さが見込まれる一方、地政学リスク、為替変動、脱炭素要請などが収益予見性を下げる要因となっている。これに対し、同社は堅調なOil領域を強化しつつ、2030年以降の成長を見据えたNew領域への布石を着実に打っている。グリーン電力やSAF、水素など次世代エネルギーの育成には時間を要するが、既に複数のプロジェクトで事業性検討や顧客獲得が進行しており、今後の成長の芽と位置づけられる。

また、同社が掲げる「Vision2030」は三つの柱で構成される。グリーン電力サプライチェーンの強化では、風力発電をはじめとする再生可能エネルギーの事業領域を発電から小売まで一気通貫でつなぎ、高付加価値化と収益創出を図る構想である。2030年に向けてグリーン電力関連の経常利益400億円を目指している。そして、次世代エネルギーの拡大では、国産SAFの量産化、水素及び次世代エネルギーの取り組みによって、将来の成長軸を構築する姿勢を示している。最後に、石油事業の競争力強化・低炭素化では、製油所のデジタルプラント化による稼働効率向上や、CCS/CCUS等の革新的技術導入を通じて、既存事業の競争力維持と脱炭素の両立を進める方針を示している。ビジョン実現に向け、人材・デジタル・グリーンという三つの基盤変革に注力しているほか、2023年度から2030年度までに戦略投資総額4,000億円を掲げており、安定収益基盤の維持と脱炭素社会への対応を両立し、持続的な企業価値向上を目指す方針としている。

現中計期間(2023〜2025年度)の資本政策については、株主還元・財務健全性・資本効率のいずれも欠けることなく、三位一体で実行することで企業価値の最大化を目指す「三位一体の資本政策」を掲げている。資本効率はROE 10%以上、財務健全性はネットD/Eレシオ1倍以下と自己資本6,000億円以上という目標を設定。株主還元では、在庫影響を除く当期純利益に対して中計3ヵ年累計の総還元性向60%以上、330円/株を下限とした安定配当を実施する方針。

最後に人的資本について、人的資本投資の2024年度実績は1人当たり16万円(前年度比3万円増)と、人材育成の要となるライン長の能力開発を進めたほか、個人の主体的な学習の啓発活動に注力し自己啓発学習への補助を拡充した。エンゲージメント指数の2024年度実績は62ポイントとなり、2年連続で第7次中計の目標を達成している。2025年度目標では、人的資本投資1人当たり18万円、エンゲージメント指数60ポイント以上を掲げる。そのほか、エネルギー業界が変革期を迎える中で、社員個々人の成長意欲向上を重視し、3年連続で民間企業の平均を上回るペースの賃上げも行っている。上司と部下の1on1ミーティングの推進により職場でのコミュニケーションも活性化しており、仕事に対するやりがいや誇りを感じる機会が増加しているようだ。

総じて、同社は石油関連の安定収益を基盤にしつつ、カーボンニュートラルを睨んだ将来投資を着実に進めることで、ポートフォリオの最適化と持続的成長の両立を図っている。中計最終年度に向けた実行力と、その後の成長戦略の着実な進捗に今後も注目しておきたい。


《HM》

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