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フィスコ投資ニュース

配信日時: 2025/06/13 17:30, 提供元: フィスコ

クシム・チューリンガムを巡る火種再燃――チューリンガム元社長による「情報持ち出し疑惑」が波紋

*17:30JST クシム・チューリンガムを巡る火種再燃――チューリンガム元社長による「情報持ち出し疑惑」が波紋
上場企業の経営権をめぐる攻防が、新たな局面を迎えている。

2025年6月13日、ネクスグループ<6634>は、子会社チューリンガムにおいて旧役職員による情報アクセスが判明したとして、調査を開始したと発表した。発端は、同社の元代表取締役・田中遼氏が退任後、チューリンガムの社員に対し、機密情報の提供を依頼したというもの。社内調査の結果、実際に決算資料や取締役会議事録など、大量の社内データがダウンロードされていた事実が明らかとなっている。
本件が注目されるのは、単なる情報漏洩疑惑にとどまらず、複雑な経営権争いの延長線上にあるためだ。

かつてチューリンガムは、クシム<2345>の子会社だったが、2025年2月に売却され、現在はネクスグループの傘下にある。売却から間もない4月には、田中氏がクシムの取締役に就任しており、その意図や背景について、さまざまな憶測を呼んでいる。

クシムをめぐっては、2024年11月に同社取締役の田原氏や倉元製作所<5216>の社長渡邉氏らが株主提案を請求したことを契機に、新旧経営陣の対立が激化。旧経営陣側は、この動きを「違法性のあるウルフパック」と疑い、加えて田原氏による重要事実の漏洩が発覚したとして、問題視していた。2024年4月には田原氏側が臨時株主総会を経て経営権を掌握し、“乗っ取り”が成立した形となっている。

チューリンガムは、まさにこの主導権争いの渦中にあった2月に売却されており、田原氏はその後も「取り戻し」を公言していた。そして、その田原氏と歩調を合わせるように、4月に田中氏がクシム取締役に就任。今回の情報持ち出し疑惑は、こうした一連の経緯の中で生じており、「偶然」とは言い難い構図が浮かび上がる。

また、田原氏の代理人を務めるのはOMM法律事務所。同事務所は、三ッ星<5820>における経営権争いでも助言したとされている。ウルフパック的手法とも言われた三ッ星のケースでは、証券取引等監視委員会(SESC)が乗っ取り側に課徴金95万円を科したが、処分までに2年を要し、その間に経営権は移っていた。
「ルールを逸脱しても、得られるリターンがペナルティを上回るのであれば、躊躇しない」――そんな価値観を持つ勢力にとって、日本の資本市場は格好の標的となっている現実が浮かび上がる。

ネクスグループは現在、民事・刑事の両面で法的措置を検討中であり、あわせて情報セキュリティ体制の見直しも進めている。上場企業の経営権争いに関連して、別の上場企業の子会社の情報が不適切に取り扱われたという、極めて異例の構図である。
企業統治と情報管理の根幹を揺るがしかねない今回の事案。今後の調査結果と関係各社の対応が、厳しく問われることになるだろう。


ウルフパックとは
複数の投資家が表向きは連携を装わず、同一の上場企業の株式を次々に買い集め、実質的に影響力を集中させて経営陣に圧力をかける戦略を指す。共同保有の開示義務やTOB(株式公開買付け)規制の隙を突く、極めて攻撃的な手法である。経営改革を掲げつつ、実際は株価操作や空売りによる利益確保、買収後に会社資産の流出を狙うケースもある。




《NH》

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