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フィスコ投資ニュース

配信日時: 2025/06/13 12:06, 提供元: フィスコ

上新電機 Research Memo(6):2026年3月期は増収増益の計画、「復活への手応え」を掴めるかがカギ(1)

*12:06JST 上新電機 Research Memo(6):2026年3月期は増収増益の計画、「復活への手応え」を掴めるかがカギ(1)
■上新電機<8173>の今後の見通し

1. 2026年3月期の業績見通し
2026年3月期の連結業績は、売上高が前期比0.2%増の404,000百万円、営業利益が同8.5%増の4,000百万円、経常利益が同14.6%増の4,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同17.8%減の2,800百万円の見通しである。

2025年3月期第4四半期に見られた収益回復の動きが継続するかが注目される。同第4四半期は、インターネット販売(EC)が前年同期比30.2%増と大幅に拡大したほか、店頭販売についても二ケタ増収を確保した。特に、大型家電を中心に、配送・設置・工事を伴う付加価値型サービスを強化した点が奏功したと評価される。2026年3月期においては、この「復活への手応え」を確実なものとし、通期での業績回復を図る計画である。足元では、人件費や物流費などを中心にコストの上昇圧力が継続すると見られるが、売上拡大によるスケールメリットを生かし、利益成長を確保する戦略を取る方針である。

業績計画の達成に向けての主な注目点は、以下の3点である。第1に、高付加価値商品の販売強化である。実質賃金の伸び悩みにより、消費マインドの回復には依然として時間を要する状況にあるが、同社は顧客対応力の向上とITの積極的な活用により、大型家電を中心とした付加価値の高い商品の拡販を進めていく方針である。エンターテインメント分野では、任天堂<7974>による次世代ゲーム機「Nintendo Switch 2」の発売が見込まれており、これに伴う関連需要の取り込みも期待される。ゲーム機は強い来店動機となるため、店頭集客に寄与するほか、周辺機器や他カテゴリへの波及的な販売拡大にもつながる可能性もあろう。第2に、ECのさらなる強化である。自社ECサイトの機能拡充に加え、他社ECモールとの連携を一層深めることにより、販売チャネルの多様化を図る。消費者との接点を増やし、デジタル領域におけるブランドプレゼンスを高めていく。第3に、物流体制の強化を通じた在庫回転率の改善である。関西茨木物流センターと東京物流センターの拡充による東西2拠点化物流体制の整備とアウトレット店舗への一括送付による効率的な在庫処分を推進し、滞留在庫の圧縮を進める。最新商品を迅速に店頭に展開できる体制を整備し、売場の鮮度を維持することにより、消費者の購買意欲を高めるとともに粗利率の向上にもつなげていく。

2026年3月期の業績計画は物足りない印象を受けるが、経営として「最低限の必達ライン」と位置付けられており、まずは上期の立ち上がりが重要な焦点となる。主力のエアコン販売など天候に左右される面もあるが、同社が逆風下においても安定的な収益成長を実現することができるか、今後の動向に注目したい。

2. 中期経営計画「JT-2025 経営計画」の概要
同社は2023年5月に2026年3月期を最終年度とする3年間の中期経営計画「JT-2025 経営計画」を公表した。「JT-2025 経営計画」は、2030年度までの8年間をパッケージと位置付け、2030年にあるべき姿を達成するには最初の3年間で何をすべきかという視点から検討したものである。

(1) 定量目標
数値目標としては、2026年3月期に売上高4,200億円、営業利益110億円、営業利益率2.6%、ROE8.0%以上、ROA及びROIC5.0%以上、配当性向30%以上、3ヶ年営業キャッシュ・フロー累計400〜450億円、また、2031年3月期のあるべき姿は、営業利益率4.0%レベル、ROE10.0%以上、ROA及びROIC7.0%以上、配当性向30%以上持続としている。やみくもに売上高の拡大を追うことなく、収益性重視の視点で競合他社比でやや低位にとどまる営業利益率の改善に主眼を置いた計画だ。もっとも、外部環境の変化や販売不振の影響などを受け、2026年3月期の数値目標の達成は現時点では困難と見られる。しかし、策定した事業戦略自体は中長期的に意義があると判断され、最後まで粘り強く取り組む方針は変わらない。加えて、今後策定されるであろう2027年3月期からはじまる次期中期経営計画において、初動の迅速な実行体制を構築すべく、着実に準備を進めていくものと見られる。

(2) 基本戦略
中期経営計画の定量目標を達成するため定性面からのテーマとして、同社は顧客の暮らしに寄り添う「コンシェルジュ」となり、同社が取り扱う商品やサービスを通じた「課題」を解決することで、顧客の期待を上回る「価値」創造を実現、それにより顧客生涯価値を創出し収益を確保するビジネスモデルの構築を目指す、としている。具体的には、リアル店舗とECという2つの販売チャネルと家電を中心とした5カテゴリを起点に、同社独自の「ドミナント戦略」や「商品・サービス戦略」を展開する。また、創業以来培ってきた「まごころサービス」を「ファンベース戦略」として進化させ、顧客に対する価値創造を目指す。また、これらの「ファンベース戦略」及び「ドミナント戦略」を支えるのが、物流などのインフラをはじめとした事業基盤であり、特に物流は事業活動において最も重要な基盤であるため、さらなる体制拡充を進める構えだ。

a) ファンベース戦略
「ファンベース戦略」とは、アクティブ会員の維持拡大を通じた顧客との関係構築、信頼関係によりファン会員(年間来店日数3日以上かつ年間購入金額8万円以上)、コアファン会員(年間来店日数10日以上かつ年間購入金額30万円以上)の拡大を目指すもので、「JT-2025 経営計画」における最重要戦略である。同社におけるアクティブ会員とは、1年間に1回以上同社で商品・サービスを購入したことのある顧客のことで、2025年3月期の対象会員数は約480万人であった。今後、国内家電市場において人口減少による漸減傾向が予想されるなど市場環境や顧客ニーズが変化するなか、同社が創業以来「まごころサービス」の実践により磨いてきた接客力を武器に「ファンベース戦略」を実践することで、中長期的に安定した事業成長を実現する計画である。「ファン」「コアファン」になった顧客は長期にわたり同社を利用する可能性が高く、それにより顧客生涯価値の創出を実現し、5年後、10年後、さらにその先の事業成長につながると同社では考えている。同社にとって「ファンベース戦略」は経営の根幹にある考え方であり、「JT-2025 経営計画」期間中にとどまらず、その先も継続して実践する考えである。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林拓馬)


《HN》

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