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フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/09/29 14:06, 提供元: フィスコ エフ・コード Research Memo(6):2025年12月期中間期も継続的な高成長を実現(2)*14:06JST エフ・コード Research Memo(6):2025年12月期中間期も継続的な高成長を実現(2)■エフ・コード<9211>の業績動向 2. M&A投資の現況 同社は2021年12月の上場後、2025年8月までに19件のM&Aを成約させてきているが、これらはすべて経験豊富なM&A専任チームが担当しており、組織内にナレッジを蓄積している。また、150社以上のM&Aアドバイザーとのネットワーク構築に加えて、リファラル(紹介)による案件が急増しているようだ。参画した経営陣による直接紹介や、イベントへの積極参加やイベントの開催によってソーシングも多様化している。同社のM&Aのねらいは、「企業価値向上のスピードアップ」「顧客への提供価値の拡大」「優秀な人材・チームの参画」「グループ経営による効率化と機能強化」の4点だ。M&Aにおいては、中長期的な企業価値、EPS増加に資する案件であることが大前提となる。黒字企業または黒字事業を対象として、継続性(売上継続期間)、成長性(売上成長率)、分散性(顧客の分散性)の3つの観点で精査をし、そのうえで合理的なEV(企業価値)/EBITDA倍率(5倍程度すなわち5年程度の回収期間)で実行する。また、資本コスト最小化と財務安全性確保を企図してデットを中心に資金調達する。M&Aについては、買収後の事業の成長に応じて追加で対価を支払う条件付対価(最大追加金額)を設定しているが、支払済みの対価は「のれん」に加わり、未実現の対価は発生確率を加味した割引現在価値(公正価値)を「その他の金融負債」と「のれん」に両建てで計上している。2024年12月期末で、「のれん」は11,486百万円、「その他の金融負債」は5,158百万円(非支配株主へ付与された売建プット・オプションの評価額1,071百万円を含む)が計上されている。 同社のPMI(Post Merger Integration:M&A後の統合プロセス)及びバリューアップの前提となるのは、基本的に経営陣をはじめとする人員にそのまま参画してもらい、短期間での人材・組織強化に寄与してもらうことだ。業績を伸ばしてきた各社の運営方針や文化などを尊重し独立性を遵守する「連邦制」の運営を基本に据えている。当然ながら、役員派遣など上場企業としてのガバナンスは担保している。そのうえで、グループ各社間での開発や営業、AI活用、経営管理機能などの連携により、グループのシナジーを拡大しバリューアップを図る考えだ。クロスセル、統合営業、販路共有などの売上アップの取り組み、共同購買、グループ内での経営資源活用など経営効率化の取り組み、グループ代表会議(四半期ごとに代表が集まり、短期、中長期の経営方針・戦略を共有・協議する)、グループ内IR(四半期決算でグループ社員全員に対してIRを実施し目線あわせを行う)などによるカルチャーマッチの取り組みなどを漸次進めており、様々な事例やこれまでにない新しい事業・プロダクト・サービスが生まれる「創発」がグループ内に起こり始めている。今後もこうした「創発」の成果には注目しておきたい。 具体的には、CRAFTの細かなデジタルメディア運用能力と同社のDX戦略設計能力を組み合わせた共同提案によって、大手代理店グループも参加していたコンペで年間50百万円規模の受注に成功した事例、技術者集団でトップによる紹介営業への依存度が高かったラグナロクに、同社の営業創出ノウハウが加わり安定的な商談機会を生む施策の開発に成功し年間約36百万円の売上を創出した事例、同社の案件需要に対する外部への業務委託を、BINKSやCRAFTのリソースをシェアすることで外注費24百万円程度の削減に成功した事例など枚挙にいとまがない。 3. 財務状況と経営指標 2025年12月期中間期末の資産合計は、前期末比4,150百万円増加し25,838百万円となった。現金及び現金同等物の増加969百万円、3件のM&Aによるのれんの増加2,077百万円、繰延税金資産の増加489百万円が主な要因である。営業活動によるキャッシュ・フローが829百万円の収入となったが、M&Aによる支出1,778百万円など投資活動によるキャッシュ・フローが2,065百万円の支出となり、フリーキャッシュ・フローは1,235百万円の支出となった。財務活動のキャッシュ・フローにおいては、自己株式の取得355百万円、連結子会社CRAFTの完全子会社化のための株式20%追加取得800百万円、借入金返済595百万円などの支出が発生する一方、M&A投資資金など4,087百万円を社債の発行と長期借入金で調達し、ネットで2,206百万円の収入となった。その結果、969百万円の現金及び現金同等物の増加となった。 負債合計は同4,109百万円増加し19,755百万円となった。社債及び借入金がネットで3,448百万円増加したことなどが主な要因である。資本合計は同41百万円増加し6,083百万円となった。親会社の所有者に帰属する中間利益の計上により利益剰余金が646百万円増加した一方、自己株式の取得355百万円、子会社CRAFTの株式追加取得及び非支配株主に係る売建プット・オプションの行使、並びに当該オプションの新たな認識などに伴い資本余剰金が242百万円減少、非支配株主持分が34百万円減少した。負債の増加額が大きく、親会社所有者帰属持分比率は26.1%と前期末を4.6ポイント下回ったが、負債性の調達にあたっては、金融機関から同社の事業成長性、M&A実行にあたっての規律、M&A対象案件の企業価値について高い評価を得ていることから円滑な借入が実現している。加えて「ネットデット(社債及び借入金から現金及び現金同等物を控除)/翌期EBITDA倍率」が中間期で1.5倍程度(35億円/2025年12月期の業績予想ベースのEBITDA23億円)と適正にコントロールできていることから、調達余力を確保している。実際に、下期に入ってからも3件のM&Aを実行し、10億円以上の調達を実施している。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 松本 章弘) 《HN》 記事一覧 |