携帯版 |
![]() |
![]() |
|
フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/08/05 11:03, 提供元: フィスコ SECカーボン:脱炭素社会の進展、アルミ・電炉鋼・EV・半導体市場の拡大とともに成長するカーボン製品の中核企業*11:03JST SECカーボン:脱炭素社会の進展、アルミ・電炉鋼・EV・半導体市場の拡大とともに成長するカーボン製品の中核企業SECカーボン<5304>は、世界トップクラスの技術を誇る1934年創業のカーボン製品メーカーである。同社は、主としてアルミニウム製錬用カソードブロック、人造黒鉛電極、特殊炭素製品、ファインパウダーといった製品の製造・販売を中核として、事業を展開している。 アルミニウム製錬用カソードブロックは、アルミニウム電解炉の底部に敷き詰められる部材であり、アルミニウム製錬に不可欠な製品である。同社は1970年に世界で初めてブロック全体の黒鉛化に成功し、その後改良を重ねながら業界をリードしてきた。人造黒鉛電極は、電気炉製鉄における鉄スクラップの溶解用途に用いられ、主に国内の電炉メーカーへ供給されている。特殊炭素製品およびファインパウダー(高純度黒鉛粉末)は、耐熱性、電気伝導性、高純度といった特性を備え、非鉄金属、工業炉、半導体、自動車、リチウムイオン二次電池などの幅広い産業分野において活用されている。 同社の強みは、アルミニウム製錬用カソードブロックにおける圧倒的な競争優位にある。現在、中国を除く黒鉛化カソードブロック市場において、約40%の世界シェアを有し、50%強のシェアを持つ東海カーボン<5301>と市場をほぼ二分している。同製品はアルミニウム製錬時の電力使用量を削減する効果を有しており、脱炭素化の流れの中で今後の更なる需要拡大が見込まれている。また、同製品は、通常5年以上にわたり使用されるため、顧客であるアルミ製錬会社は品質の安定性を重視し、品質に信頼のある供給元との取引を基本としている。アルミ製錬技術を提供する技術プロバイダーは、信頼性の高い製品に対して認証を与えており、この認証が顧客における購入判断の前提となっている。認証取得には高度な品質水準と相当な時間を要するが、同社は主要技術プロバイダーから早期に認証を取得しており、この参入障壁の高さも同社の競争優位性を支えている。加えて、住友商事グループとの連携を通じたグローバルネットワークも同社のもう1つの強みだ。世界規模の販売網を生かした海外市場における販売力は、輸出が約8割という同社の売上高の基盤である。 2025年3月期決算は、売上高31,179百万円(前期比16.4%減)、営業利益6,823百万円(同33.2%減)、経常利益7,716百万円(同33.2%減)、当期純利益5,750百万円(同21.2%減)と、減収減益の結果となった。製品別の売上高を見ると、主力のアルミニウム製錬用カソードブロックは、取引先における更新需要の鈍化および在庫調整の長期化により販売数量が減少、22,002百万円(同17.3%減)にとどまった。人造黒鉛電極については、国内外での粗鋼生産の低調な推移が影響し、販売が減少、4,524百万円(同26.3%減)となった。一方、特殊炭素製品は熱処理炉向けの需要が堅調で、3,653百万円(同1.4%増)と増収を維持した。ファインパウダーおよびその他炭素製品も、モーターブラシ向けなどの需要が堅調で、998百万円(同5.3%増)となった。損益面では、売上高の減少に加え、円安の進行による原材料価格や資材コストの上昇、さらに設備投資の進展に伴う減価償却費の増加が利益を圧迫した。なお、減益となったものの、営業利益率は21.9%と高水準を維持している。 2026年3月期連結業績は、売上高29,200百万円(前期比6.3%減)、営業利益3,900百万円(同42.8%減)、経常利益5,000百万円(同35.2%減)、当期純利益3,300百万円(同42.6%減)と減収減益の計画となっている。為替は1ドル=140円を想定しており、やや保守的な為替水準の前提は、減収減益の計画となっている要因の1つである。なお、アルミニウム製錬用カソードブロックの在庫調整の影響は上期までは継続するが、世界的なアルミニウム製錬量の拡大傾向を背景に下期には在庫調整は完了、需要が回復する見込みだ。 同社は2024年2月に中期経営計画を公表、最終年度である2027年3月期における売上高440億円、営業利益80億円、ROE8%を目標としている。主力のアルミニウム製錬用カソードブロックでは、既存設備の供給力を高めつつ、市場シェア拡大を進めており、電炉鋼需要の拡大とともに需要増が見込まれる人造黒鉛電極については、品質改善と新規顧客開拓を推進中だ。特殊炭素製品では、半導体分野も視野に入れた中で販売拡大を図り、ファインパウダーはEV関連等様々な需要取り込みに向けて設備増強と市場拡大を図っている。加えて、新たに設置した戦略投資会議では、M&Aを含む事業提携投資について、経営陣が継続的に検討を重ねている。利益率が高く、今後の成長分野と目される特殊炭素製品やファインパウダーに関連する分野を中心にその他幅広い分野でのターゲットの探索を進めている。 株主還元については、連結配当性向30%を目安にできる限り安定的に実施することを基本方針とする。2021年3月期から累進配当を継続しており、2026年3月期も減収減益の計画ながら前期と同水準の100円の配当とする計画である。 在庫調整などの影響を受け、足元では一時的に業績が悪化しているものの、高い技術力と世界有数のシェアを武器に、同社は依然として確固たる競争優位を維持している。中長期的には脱炭素社会の進展やアルミ・電炉鋼・EV・半導体分野の需要が追い風となる見通しであり、M&Aによる非連続的な成長の可能性もあろう。厳しい環境下でも、進化を続ける同社の今後の展開には注目しておきたい。 《HM》 記事一覧 |