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フィスコ投資ニュース

配信日時: 2025/09/12 13:06, 提供元: フィスコ

室町ケミカル Research Memo(6):事業再構築と成長基盤固めに取り組む「中期経営計画2028」を発表(1)

*13:06JST 室町ケミカル Research Memo(6):事業再構築と成長基盤固めに取り組む「中期経営計画2028」を発表(1)
■室町ケミカル<4885>の今後の見通し

1. 中期経営計画と長期ビジョン
(1) 新たな長期ビジョンと「中期経営計画2028」の位置付け
同社は、豊富なノウハウと確かな技術を生かし、顧客の問題を解決することで、2031年5月期に売上高100億円・営業利益率10%以上、EBITDA※12億円以上を目指す長期ビジョン(VISION100)を発表した。売上高100億円、営業利益率10%以上という目標について、従前より1年前倒しでの達成を目指す。

※ EBITDA=営業利益+減価償却費で算出

同目標を達成するために、「中期経営計画2028」(2026年5月期〜2028年5月期)の3年間は、事業の再構築とさらなる成長に向けた基礎固めを行う期間と位置付け、健康食品事業からの撤退と医薬品事業・化学品事業の事業基盤強化、並びに人的資本経営の基礎固め、資本コストを意識した経営を推進する。

(2) 基本方針と業績目標
「中期経営計画2028」の基本方針として以下の5点に取り組む。

a) 既存事業の伸長と新市場・新技術へのチャレンジ
b) 売上増に対応した製造体制構築、製造設備の拡充
c) アライアンスの積極活用(製造・販売・研究)
d) 人的資本経営の導入に向けた土台作り
e) 資本コストを意識した効率的な経営

業績目標としては2028年5月期に売上高72億円、営業利益率5%(3.6億円)以上、EBITDA6.5億円を設定した。売上高については健康食品事業を除けば2025年5月期から年率9%成長を計画している。営業利益については製造体制強化に伴う減価償却負担増もあって、2025年5月期の水準を下回るが、EBITDAでは超過する計画となっている。また、営業利益ベースでは2029年5月期に過去最高を更新する見通しだ。


化学品事業は2027年5月期以降、PFAS関連で大きく飛躍

2. 事業別成長戦略
(1) 医薬品事業
医薬品事業を取り巻く市場環境として、国内の原薬・中間体の市場規模は年間5千億円程度で今後も安定的に推移すると見込まれている。製薬メーカーでは原薬の調達先を複数化する動きが継続するとともに、円安傾向やサプライチェーンリスクの高まりを背景に、国産の原薬を求める動きが強まるものと見ている。また、国内では製薬メーカーにおける品質問題や原薬メーカーでのGMP違反発覚を発端とした厚生労働省による規制強化が進められており、特に後発医薬品については今なおひっ迫した状況が続いているため、後発医薬品メーカーの再編も含めて喫緊の課題ともなっている。こうした市場環境は同社にとって事業拡大の好機になると見られ、実際に開発依頼件数も増加傾向にある。

こうしたなか、同社は事業戦略として、a) 連続生産システムの技術構築と工場実用化、b) 新たな柱となる自社製造原薬と輸入原薬を育成、c) 主力品の海外販売展開や、製造技術を応用した同系品の製造開始による販売量拡大、d) 新製品のスムーズな立ち上げ体制構築の4点に取り組み、2028年5月期に売上高39億円、営業利益1.9億円、EBITDA4.0億円を目指す。2025年5月期に対して売上高が順調に拡大する一方で、営業利益やEBITDAは設備投資や人員体制の強化など先行投資を行う期間と位置付けているため低水準にとどまる見込みだ。ただ、2027年5月期を底にして増収増益トレンドに転換する見通しで、2031年5月期には売上高50億円、営業利益5億強、EBITDA7億円を目指す。

a) 連続生産システムの技術構築と工場での実用化(設備投資額135百万円)
製造プロセスとして現在「バッチ合成」技術によって原薬・中間体を製造しているが、業界のトレンドになりつつある「フロー合成」技術を確立し、2027年ごろに工場での量産開始を目指している。

「フロー合成」技術とは、複数の原料を微細な流路(反応管)に連続的に流し込むことで反応させる化学合成技術のことで、「バッチ合成」で必要となる中間体の単離・精製工程を省き連続的に生成物を得ることが可能である。メリットとして、省エネルギー、省廃棄物、省スペース化が可能で多品種少量生産に適していること、安全性が向上し反応条件の制御やスケールアップが容易なことが挙げられる。バッチ合成とは仕様の異なる設備を用いるため初期投資コストは嵩むものの生産性向上が期待できる。同社は原薬の量産規模や特性に応じて、「バッチ合成」と「フロー合成」を使い分ける方針としており、「フロー合成」に関してはスケールアップの容易性などの特徴を活かし、試作品や小規模品での活用から、将来的な量産化までの一貫した開発への活用を目指していくと見られる。

同社では、省スペース化や多品種少量生産、スケールアップの容易さと言った点が同社の事業特性に合致するほか、長年培ってきたイオン交換樹脂の分離・精製技術も生かせると考えており、今後の受注拡大と収益性向上につながる取り組みとして注目される。既に「フロー合成」技術を使って量産する品目も決まっており、これら品目だけでも投資効果があると見ている。工場でのライン稼働は2027年に開始する予定だが、顧客先での品質管理評価に1年程度の期間を要するため、実際に収益面で効果が顕在化するのは2028〜2029年以降となる見通しだ。

b) 新たな柱の創出(設備投資額162百万円)
2025年5月期の医薬品事業の売上高のうち、約67%は3品目(高カリウム血症、抗てんかん、抗ヘルペスウイルス)で占められており、このうち抗てんかん薬については競争激化により減収基調となっている。同社は個別製品の動向に影響を受けにくい安定性の高い事業構造を構築すべく、大型原薬を含む輸入原薬や自社製造品の新規品を積極的に投入し(22品目を目標)、新規品だけで2028年5月期に約12億円の売上を見込んでいる。

新規品の過半は輸入原薬で占められ、このうち7億円を見込む大型品を2026年5月期下期から販売開始する予定だ。自社製造品については3品目で2028年5月期に売上高4.6億円、設備投資額として1.6億円を計画している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


《HN》

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