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フィスコ投資ニュース
配信日時: 2025/06/09 17:34,
提供元: フィスコ
大豊建 Research Memo(4):売上高・利益ともに期初計画に未達だが、低採算案件の減少により収益性が改善
*17:34JST 大豊建 Research Memo(4):売上高・利益ともに期初計画に未達だが、低採算案件の減少により収益性が改善
■業績動向
1. 2025年3月期の業績概要
大豊建設<1822>の2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比12.1%減の143,394百万円、営業利益が同11.9倍の5,533百万円、経常利益が同313.2%増の5,204百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が3,691百万円(前期は2,072百万円の損失)と、減収ながら営業増益となり、最終損益は黒字回復した。
期初計画は売上高が145,000百万円、営業利益5,900百万円であったが、売上高・利益ともに計画には届かなかった。売上面は、土木事業におけるシールド工事など大型工事の進捗が計画より遅延したこと及び、建築事業においても一部の大型プロジェクトの進捗の期ずれが発生したことが主な要因である。利益面は、一部工事の進捗遅延による減収効果に加え、国内物流施設の施工不良に伴う是正工事による建設コストの増加、為替差損の発生などが利益を圧迫した。
他方で、営業利益の前期比は11.9倍と飛躍的に改善した。2024年3月期は特定の工事において採算悪化したことが利益面を圧迫したが、2025年3月期は大きく採算悪化した案件が発生せず、収益性が回復した。その結果、営業利益率は前期比3.6ポイント改善しており、採算意識の向上やプロジェクト管理体制の強化が寄与したと見られる。
受注高は前期比3.1%増の150,973百万円と拡大し、期初計画を上回る水準で着地した。土木事業については入札競争における受注獲得率が伸び悩み苦戦したものの、建築事業については好調な市場環境を背景として、収益性や施工体制のバランスを考慮した受注選別を行いながらも、同27.3%増と大幅に伸長した。受注拡大に伴い、2025年3月末時点の単体ベースの受注残高は同3.3%増と堅調に積み上がっている。連結ベースの受注残高は開示されていないものの、一定の受注水準を確保していることは評価されよう。
2.事業セグメント別動向
2025年3月期は、土木事業・建築事業それぞれ異なる市場環境及び課題に直面しながらも、全体として収益性が改善した点が注目される。
(1) 土木事業
土木事業は、受注高が前期比20.0%減の60,004百万円、売上高が同3.8%減の70,794百万円、売上総利益が同140.5%増の7,386百万円、営業利益が3,647百万円(前期は346百万円の損失)であった。受注高は、入札競争における受注獲得率が低調で、例年よりも苦戦した模様である。他方で、利益面では大きな改善が見られた。2024年3月期において採算が大きく悪化した案件が3件存在したのに対し、2025年3月期は不採算案件が発生せず、収益性の回復を後押しした。その結果、売上総利益率は同6.2ポイント、営業利益率は同5.7ポイント改善した。
(2) 建築事業
建築事業は、受注高が前期比27.3%増の90,186百万円、売上高が同20.5%減の67,900百万円、売上総利益が同29.2%増の4,421百万円、営業利益が同246.8%増の1,227百万円であった。受注高は好調な市場環境を背景として、収益性と施工体制のバランスを考慮しながらも、受注選別の下で大幅に拡大した。売上高は一部案件の期ずれの影響により2ケタ減収となった。利益面は、資材価格の上昇や施工不良に伴う手直し工事などのコスト圧力を受けたものの、ほかの案件では適切に採算コントロールを行い、売上総利益率は同2.5ポイント、営業利益率は同1.4ポイント改善した。
同社は2023年5月19日に公表した2028年3月期までの中期経営計画において、いわゆる「2024年問題」への対応として、時間外労働の上限規制を見据えた施工体制の適正化を重視し、従来のような規模追求型の経営から脱却して選別的かつ利益重視の受注戦略へと転換している。そのなかで迎えた2025年3月期は、資材価格の上昇や人件費の増加といった厳しい外部環境下にありながらも、土木・建築両事業において利益率の着実な改善が見られた点において、同社の経営方針が一定の成果を上げつつあることを示す重要な転換点であると考えられる。
3. 財務状況と経営指標
2025年3月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比15,238百万円減少の149,842百万円となった。うち流動資産は同14,698百万円減少の120,066百万円であり、主には受取手形・完成工事未収入金等が同17,013百万円減少した。固定資産は同540百万円減少の29,776百万円であり、主には有形固定資産が同863百万円減少した。
負債合計は前期末比19,384百万円減少の76,777百万円となった。うち流動負債は同18,901百万円減少の63,861百万円であり、主には支払手形・工事未払金等が同13,785百万円、短期借入金が同6,100百万円減少した。固定負債は同482百万円減少の12,916百万円であり、主には退職給付にかかる負債が同878百万円減少した。
純資産合計は前期末比4,145百万円増加の73,065百万円であり、主には利益剰余金が当期純利益の計上により、同3,212百万円増加した。
主な財務指標を見ると、財務健全性及び資金繰りの安定性が明確に改善している。自己資本比率は47.7%と前期末比6.8ポイント改善していることに加え、流動比率は188.0%と同25.2ポイント改善しており、運転資金の面でも安心感がある。また、現金預金から有利子負債を控除して算出されるネットキャッシュは同10,241百万円増加しており、将来的な事業投資及び株主還元余地の拡大を示唆するものと言える。同社は積極的な財務体質の改善を進め、内部留保の充実により財務リスクを着実に低減している。今後の成長投資や不測の事態への備えという観点からも、同社の財務基盤は安定的であると評価されよう。
4. キャッシュ・フロー
2025年3月期のキャッシュ・フローを見ると、営業活動によるキャッシュ・フローは利益創出及び運転資金の効率化などにより、11,776百万円の収入であった。投資活動によるキャッシュ・フローは投資有価証券の取得などにより、876百万円の支出となった。財務活動によるキャッシュ・フローは短期借入金の返済などにより6,621百万円の支出となった。その結果、現金及び現金同等物の期末残高は前期末比4,134百万円増加し、順調に積み上がった。全体として、営業活動で安定的にキャッシュを稼ぎながら、投資及び財務面ではバランスの取れた対応がなされており、持続的な成長に向けた健全な財務運営が行われていることが示唆される。
(執筆:フィスコアナリスト 吉林拓馬)
《HN》
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