大正末年春、田中勇は目黒蒲田駅電鉄本社に入社した。実質オーナー五島慶太はこの時四十四歳、田中二十一歳、運命の出会いであった。 五島の社業拡張への意欲はすさまじかった。新路線の開拓、ターミナルデパートの解説、そして企業“乗っ取り”。だが世界恐慌によって、五島は銀行借金行脚に明け暮れた。田中二十六歳、まだ遠くから五島の影を眺めるだけの、うら若き青年であった。
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