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黄金サイクルと農耕民族型投資戦略

浜口準之助 パンローリング

全体として首肯できる内容だが・・・・

 まず、学術書のようなしぶい表紙が独特である。「落ち穂拾い」と「農耕民族型」というのをかけているということなのだろう。まあ、「爆騰」「大儲け」的な仰々しい表紙と比較すれば好感が持てる。

 本書では、まず現在の日本株は「黄金サイクル」に入っており、しばらくは上昇が期待できると主張している。基本的には、マクロ経済分析の視点からの相場動向の予測であるが、これはひとつの主張なりシナリオとしての意味の理解はできる。ただ、非常に単純化された内容であり、根拠が十分に示されているとは感じられなかった。

 本書で示されている投資戦略は、低位、低PBR銘柄への分散投資である。バリュー株とグロース株のパフォーマンスを中長期で比較すれば前者が有利であることは、既にこれまで多くの著作、研究でも示されてきたところであり、意外感はない。また、行き当たりばったりではない投資戦略を持つことの重要性も、よく指摘されるところである。  そうした意味で、本書の基本的な主張、内容は首肯できるところが多い。また。銘柄スクリーニングの方法を具体的に示している点なども有用だろう。

 ただ、本書での「バリュー株」と「グロース株」のとらえ方は、私自身の感覚からすると少々違和感のあるところがあった。「グロース株」はやはり「成長株」とするのが適当なのではないか?。(本書では「優良株」としている。)例えば、2006.8時点で、ヤフーはともかく、商船三井や三菱商事などがグロース株の範疇としてとらえられているが、これには違和感がある。
 私自身の感覚でいえば、グロース株とは高い成長性が期待され、それゆえ、高PERまで買われているような銘柄であり、外国人投資家や機関投資家などの投資対象となっていて、PERなども極端な割高感はない適正水準にあると見られるようなキヤノンなどはこの範疇には入らない。 まあ、この分類をすることが本書の趣旨ではないので、あまり大きな問題ではないのだが。

 また、もうひとつ、自分の感覚とそぐわない点がある。それは、今後の株式市場が上昇する可能性が高く、実際に全体としてそのような展開になったとするならば、こうした株価上昇期はバリュー株よりもグロース株の方のパフォーマンスがよくなる可能性があるのではないかということである。とりわけ昨今は個人投資家の占める位置というのが大きくなっている。株式市場全体が上昇し、個人投資家にも含み益がある状態では、通常、機関投資家などは買わない銘柄、中小型株や材料性のある新興市場の株、が極めて高いパフォーマンスが挙げる可能性があるのではないかということである。こうした相場に乗れば、短期で大きな利益を確保できる可能性はあろう。

 中長期の視点で全体としてバリュー株とグロース株を比較した場合、前者が有利となるのはある意味当然である。というのは、高い成長性を期待されて高PERまで買い上げられた銘柄の多くは、一時的にはその成長性を維持できても、中長期的には競合企業が出てきたり、技術や製品が陳腐化したりして、その成長を維持することができない場合が多いからである。そうなれば、期待が大きい分、株価の下落率も非常に大きくなる。ところが、成長の初期段階で、こうしたグロース株に投資することができていれば、成長性が維持され株価が大きく上昇した場合に、大きな利益を得ることができる。こうした特定銘柄の大きな利益が投資全体の成績、パフォーマンスを押し上げるというのは、ままあることである。

 但し、これは低位バリュー株についても同様の事がおこりうる(低位株は一般に株価の変化率は大きくなりがちで、とりわけ企業の業績が急回復した場合などは大きく上昇することが多い印象がある)。グロース株の中で株価が急騰する銘柄を見つけるよりも、低位株の中から有望な銘柄を見いだす方がやりやすいという面はあり、また、本書で示した戦略の方が全体としてリスクは低くなると考えられるため、本書の内容はやはり全体として首肯できるとは思うのだが、別のスタンスや投資戦略も同時に存在すると考える。

 私自身は、本書の戦略も参考にしつつ、それだけではない視点で、自分自身の運用をすすめていきたいと考えている。

(ふしみん 40代 公務員)


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